平成30年9月1日
栄養ケアプロセスのPES報告が面白くなってきた
福岡女子大学教授 片桐 義範この著者の書いた書籍
栄養ケアプロセスをご存知でしょうか。すでに,栄養ケアプロセスを理解し実践している管理栄養士・栄養士の先生方,また,今後取り組んでいかれる先生方もおられるのではないでしょうか。そこで,栄養ケアプロセスの面白さと奥深さについて少し解説させていただきたいと思います。
栄養ケアプロセス(NCP;Nutrition Care Process)は,2005年にアメリカで開催された「栄養管理の国際標準化に関する会議:International Meeting on Standardized Language of Dietetics」で検討され,国際的に普及させることが確認されています。2008年に開催された国際栄養士会議(ICD;International Congress of Dietetics)においても栄養ケアプロセスに関するワークショップが開催されています。
日本では,公益社団法人日本栄養士会が栄養ケアプロセスを導入し,2012年に「国際標準化のための栄養ケアプロセス用語マニュアル」としてまとめられました。栄養ケアプロセスは現在,日本栄養士会や各都道府県栄養士会の管理栄養士・栄養士の生涯教育として基本研修の中核に位置づけられ国内での普及を目指しています。
栄養管理の手法としては,栄養ケアマネジメントが多くの施設で導入され,日本国内に広く普及しています。「栄養ケアプロセス」と「栄養ケアマネジメント」の過程は基本的に同じですが,栄養ケアプロセスは,「栄養アセスメント」「栄養状態の判定(栄養診断・PES報告)」「栄養介入」「栄養モニタリングと評価」の四つの過程で構成されています。新たな概念として,栄養状態の判定(栄養診断)と栄養診断の根拠を示すPES(Problem Related to Etiology as Evidenced by Signs and Symptoms)報告が導入されており,栄養診断コードと用語,PES報告の記載方法が標準化されています。
栄養ケアプロセスの面白い点は,新たに導入されたPES報告です。PES報告は,簡潔かつ明瞭で,対象者の栄養状態に問題が生じている根拠(Sign/Symptoms)と原因(Etiology)を明確に示し,栄養状態の問題(Problem)を総合的に判定(栄養診断)する記載方法です。さらに,栄養介入計画もPES報告に基づいて,栄養状態に問題が生じている根本的な原因や要因を改善するための根拠を示した栄養介入計画を立案することが重要なポイントとなります。
したがって,PES報告を理解することが,栄養ケアプロセスを理解することになるといっても過言ではありません。PES報告は簡潔かつ明瞭に「○○の根拠に基づき,○○が原因となった,○○の栄養状態である」と記載します。このフレーズは簡潔明瞭な文章ですが,実際の症例でPES報告を書いてみると簡潔かつ明瞭であるために実に面白く,そして奥深く,改めて栄養アセスメントの重要性を認識させられます。管理栄養士・栄養士の先生方には,栄養ケアプロセスのPES報告にチャレンジしていただき,その面白さと奥深さを感じながら実践につなげていただければと願っております。
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