令和2年1月1日
スポーツイベントの飲食提供が果たす役割
シダックス株式会社シダックス総合研究所 主席研究員 高戸良之この著者の書いた書籍
今年は,いよいよ東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)が開催される。世界中のトップアスリートがそれぞれの競技で最大限のパフォーマンスを発揮する場面を想像し,期待で胸を膨らませている一方で,飲食提供業者の一員としては,現在,アスリートを含む関係者が満足のいく成果を出すために,少しでもお役に立ちたいと様々な準備をしているところである。
アスリートがそれぞれの最大のパフォーマンスを発揮するためには,トレーニング,栄養・食事や休養,メンタルなどの様々な要因のバランスを整えていくことが重要である。また,コンディションを整えるために,監督,コーチ,トレーナー,医・科学の各専門分野のスタッフと連携することも重要となる。特に,スポーツイベントにおいては,適切に栄養管理ができるようなメニュー構成で飲食が提供され,各料理の栄養量やアレルギー表示などのコンディション管理に必要な情報提供によって,各アスリートが自己管理できる食環境を整えることが必要である。
また,料理の安全・衛生管理が徹底され,リラックスして飲食できるように配慮することはもちろん,ハラルやベジタリアンなど多様な文化や宗教などへの配慮,ドーピング対策なども必須となってきている。
アスリートの栄養・食事サポートの専門職としては,スポーツ現場で活躍する管理栄養士を対象に,2015年から「公認スポーツ栄養士」が認定された。今後のスポーツイベントの栄養マネジメントの中心的な役割を担う専門家として活躍が期待されている。
国際的なスポーツイベントにおける飲食提供は,単にアスリートの栄養管理にとどまらず,多くの役割が期待されるようになってきた。
オリンピックでは,ロンドン2012大会で飲食戦略が初めて策定された。東京2020大会は,「東京2020大会における飲食提供に係る基本戦略」(2018年3月)が「選手の栄養管理」「食品の安全衛生」「環境への配慮」「多様性と調和」「食文化等情報発信・エンゲージメント」などの視点でとりまめられ,HACCP導入による食品衛生管理,「持続可能性に配慮した調達コード」をもとにしたGAP認証など,国際的な規格に見合う調達などが大会における飲食提供の運営指針とされている。
また,ここ数年はスポーツイベントの運営に,夏季の高温,大型台風などの予測できないリスクが顕在化しており,物流を含めフードセキュリティへの要求が高まっている。これらの安全管理の取り組みや,持続可能な開発目標(SDGs)を背景にした食品廃棄物の抑制,食文化の多様性と和食の推進など,スポーツイベントの飲食提供は,すでに高い水準にある日本のフードサービスレベルをさらに底上げし,国際的な競争力を高める役割も担っているといえよう。
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