栄養士・管理栄養士養成課程教科書。日本人の食事摂取基準(2025年版)に対応した六訂版。ライフステージごとの特性を踏まえた実践への展開を詳述する。令和5年国民健康・栄養調査ほか最新のデータを示す。
内容紹介
まえがき
はじめに
日本は急速に高齢化が進み,₂₀₂₃(令和 ₅)年の厚生労働省調査の平均寿命では男性は ₈₁.₀₉ 歳,女性は ₈₇.₁₄ 歳であり,世界有数の長寿国である。健康で長寿を全うできるならば,これ以上の幸せはないが,寝たきりや認知症などによる要介護状態でなく生活できる期間である「健康寿命」は,₂₀₂₃ 年男性 ₇₂.₆₈ 歳,女性 ₇₅.₃₈ 歳であり,平均寿命との格差が大きいという課題がある。また,わが国の疾病構造,死因順位も変化してきた。高齢化に伴う糖尿病・高血圧症・脂質異常症・循環器病・がん・骨粗鬆症などの生活習慣病の増加や高齢者世帯の増加も課題となっている。
これら社会課題の解決に向けて,日本では ₁₉₈₅(昭和 ₆₀)年以来,食に関連する健康づくりのためのさまざまな指針などが発表されてきた。₂₀₀₀(平成 ₁₂)年には,健康寿命を延伸し,すべての国民が健やかで活力ある社会とするための対策として,「₂₁ 世紀における国民健康づくり運動(健康日本 ₂₁)」が策定され,その最終評価を踏まえて ₂₀₁₃(平成 ₂₅)年には「健康日本 ₂₁(第二次)」が策定され,健康寿命の延伸と健康格差の縮小,生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底に重点が当てられた。₂₀₁₈(平成 ₃₀)年の中間評価を経て,₂₀₂₂(令和 ₄)年に最終評価が行われ,続いて「健康日本 ₂₁(第三次)」が策定された。「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」というビジョンが掲げられ,₂₀₂₄(令和 ₆)年 ₄ 月から施行されている。
この「食」に関係する課題や取り組みについては,日本においても世界においても不足や欠乏という不適切一択の時代から大きく様変わりし,個別性多様性を含む不足と過剰(飢餓と肥満)という不適切の二重負荷時代(栄養不良の二重負荷時代)を迎え,益々複雑化の様相を呈していることが,大きく影響しているといえる。すなわち,健康づくりの推進のための活動に取り組むことができる,保険・医療・福祉・教育などの多方面から食事・栄養管理の業務に携わる専門家の養成が益々急務となっている。
本書『応用栄養学』刊行の目的は,まさにそこにあり,人が誕生してから一生を終えるまで,すなわち妊娠や分娩,成長,加齢などに伴う人体の構造や機能の変化,栄養状態の変化などについて理解し,さらに対象者の栄養状態や心身機能に応じた栄養管理(栄養ケア ・ マネジメント)の基本的な考え方を修得することである。また,食事摂取基準策定の考え方や科学的根拠を理解し,健康維持・増進および疾病予防のための食事摂取基準に基づいた食事改善の計画と実施,健康に影響を及ぼすリスクの管理について基本的な考え方や方法を修得することを目的としている。
本書の構成にあたっては,管理栄養士養成におけるモデルコアカリキュラム,管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)の内容を検討し,栄養士・管理栄養士が専門職として栄養状態や心身機能に応じた栄養管理ができるよう配慮した。つまり,ライフステージごとに,身体および精神の両面についてその特性を十分理解し,その上で各期の望ましいエネルギーや栄養素摂取量を実際の食生活に展開できるようにした。また,六訂版の刊行にあたり,「日本人の食事摂取基準(₂₀₂₅ 年版)」の趣旨に則るとともに,最新の「国民健康・栄養調査」の集計結果に沿い,管理栄養士国家試験対策書として基本的な知識が修得できるように配慮した。
そのために,本書の執筆者は栄養士・管理栄養士育成に情熱的な,かつそれぞれの分野に精通した教育者,研究者で構成し,執筆にあたっては各ライフステージの特性に合わせて執筆者の意見を尊重した。
なお,今般の六訂版の改訂にあたり,これまで編者を務めていただいた津田博子先生は編者を辞され,新しく大和が編者として加わった。また,一部の共著者についても新たな方をお迎えし,前版にもまして充実した内容をめざした。
本書は,栄養士・管理栄養士の養成,国家試験対策書として重要な示唆を与えるものと確信している。より役立つ書にするためにも,ご利用された方々のご指摘,ご指導をお願いする次第である。
₂₀₂₄ 年 ₁₂ 月
編 者 麻 見 直 美
大 和 孝 子
目 次
第1章 栄養ケア・マネジメント
1.栄養ケア・マネジメントの概念
2.栄養アセスメント
3.栄養ケア計画の実施,モニタリング,評価,フィードバック
第2章 食事摂取基準
1.策定の基本的事項と留意事項
2.活用に関する基本的事項
3.エネルギー・栄養素別食事摂取基準
第3章 妊娠期・授乳期の栄養
1.妊娠期・授乳期の生理的特徴
2.妊婦・授乳婦の食事摂取基準
3.妊娠・授乳期の栄養アセスメントと栄養ケア
第4章 新生児期・乳児期の栄養
1.新生児期・乳児期の生理的特徴
2.新生児期・乳児期の食事摂取基準
3.新生児期・乳児期の栄養アセスメントと栄養ケア
第5章 成長期の栄養
1.成長期の生理的特徴
2.小児の食事摂取基準
3.幼児期の食事摂取基準
4.学童期の食事摂取基準
5.思春期の食事摂取基準
第6章 成人期の栄養
1.成人期の生理的特徴
2.成人期の食事摂取基準
3.成人期の栄養アセスメントと栄養ケア
第7章 高齢期の栄養
1.高齢期の生理的特徴
2.高齢者の食事摂取基準
3.高齢期の栄養アセスメントと栄養ケア
第8章 運動・スポーツと栄養
1.運動・スポーツ時の代謝特性
2.運動(身体活動)の健康への影響:メリット ・デメリット
3.運動・スポーツ競技者における
第9章 環境と栄養
1.生体リズムと栄養
2.ストレスと栄養ケア
3.特殊環境と栄養ケア
4.災害時の栄養
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