福祉ライブラリ

リスクマネジメントと福祉

著 者
発行年月日
2026年3月25日
ISBN
978-4-7679-3452-5
Cコード
C3032
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定価 2,750(本体価格:2,500円) 在庫あり

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内容紹介

介護,医療,保育,学校等の現場における事故と訴訟。判例を通じ,法的のみならずウェルビーイングといった福祉的な視点からそうした現場でのリスクマネジメントについて詳述した。

まえがき

はしがき

 拙著『リスクマネジメントと法』では,法と証拠という法制度を中心に道徳的に見て悪いことは刑罰を受けることはないという罪刑法定主義の原則の観点から論述したが,現代社会では法令・制度が必ずしも十分に整備されていない新たな領域等において社会的制裁を受けるというリスクが発出している。日本リスクマネジメント学会創立者である亀井利明先生は「直面した事態を冷静に判断し,機敏に対応するとともに,先を読み,将来のためにいかなる手段を講じるか」ということを指摘している。将来の変化を予想する,あるいはその予兆を把握し,事象が顕在化する前に適切な措置を講じる必要がある。

 昨今,SNS,Eメールなどの普及により,対人接触機会が著しく減少し,言語化できない,感情表現ができない,コミュニケーション不足が原因と思われる介護事故や事件が発生している。

 2022(令和4)年に宮城県石巻市の障害者施設で,入浴の介助を受けていた女性が誤って高温の湯に入れられ大やけどを負って死亡した事件が発生した。この事件の遺族は,施設職員のコミュニケーション不足を指摘している。

 また,刑務所・少年院を対象としたアンケート調査によると,いわゆる「闇バイト」に関わった78人のうち,「自分の感情が言語化できない」者が46%とほぼ半数であることが示されている。語彙の減少や概念の貧弱化による言論や思考の衰退が事故・事件を誘発し,犯罪の要因にもなっている。

 この調査結果は,不注意による介護事故,貧困による闇バイトという単線だけではなく共通した要因を示唆している。先行研究による成果,思い込みというバイアスに支配されることなく,現場をよく調べ,確認し,自らの思考プロセスを自ら検証することが必要である。福祉の現場では「利用者のため」「子どものため」「組織のため」を大義名分として職員の処分や制裁を正当化する手段として捉えている傾向がある。「リスク」とは本来的に知り得ないはずの「未来」について「現在」の「関係性」の中で描写するということである。

 日本リスクマネジメント学会会長の上田和勇先生は「社員の幸福感やウェルビーイングが高い職場,特に社会的健康度が高い,いいかえれば『つながり』が感じられる職場では,会社や自分を裏切る不正や倫理的リスクは起きにくい」と指摘している。同学会理事長の亀井克之先生は,「文学やアートから,リスクマネジメントの教訓を見出すことができる」と指摘している。福祉サービスは人的サービスであるため,人は必ずミスを犯し,リスクが発生するため,法律の整備が追い付かない状況では,明文化された法律の枠内のみで判断することは困難であり,本書では明文化された法律のみだけではなく,「ウェルビーイング」「アート」という福祉的視点からリスクマネジメントを考察した。

 また,本書では,「職員よし」「利用者よし」「社会よし」という「三方よし」の福祉理念のもと,常に仲間を考え,利用者の笑顔の中で,福祉の現場で働くという誇りが良好な人間関係や職員同士の協調的な関係性を構築し,職員間の絆を深め,事故を軽減できる事例をあげている。また,人々との心の揺さぶり,人格的価値を高めるアートの感覚を法制度に採り入れる視点も言及した。

 感謝されるべき福祉職が裁判に訴えられる,処分されることは遺憾なことである。本書を通じて,福祉サービスに関する事故対策を机上の空論に終わらせることなく,リスクが発生した事後対応を分析し,リスクに対する危機意識と自覚を喚起する一助になれば幸いである。

 最後に本書の出版にあたり,本書の企画・構成の段階からご尽力をいただいた株式会社建帛社の加藤義之氏に深く感謝申し上げる。

 なお,本書は拙著『リスクマネジメントと法』(建帛社),日本リスクマネジメント学会誌『危険と管理』,ソーシャル・リスクマネジメント学会誌『実践危機管理』,『東北福祉大学紀要』の拙稿を加筆・修整したものである。

 2026年3月

菅原好秀

目 次

第1章 裁判事例から学ぶリスクマネジメント   

第1節 コンプライアンスとリスクマネジメント―「明治機械事件訴訟」を題材として―

第2節 アートと法―映画「宮本から君へ」助成金不給付取消訴訟を題材として―

第3節 福祉サービス企業に求められるリスクマネジメント―福祉人材確保に向けた幸福感の役割について―

第4節 リスクと社会学―感情的コンフリクトに関する一考察―

第5節 地域教育行政とリスクマネジメント―学校事故裁判例から―

第6節 介護事故裁判の新たな潮流―精神障害者の監督者の責任から―

第7節 介護の責任と注意義務

第8節 苦情とリスクマネジメント―責任無能力者の監督義務者の責任と介護事故裁判例を踏まえて―

第2章 介護事故裁判事例とリスクマネジメント

ケース1 介護サービスの清掃義務違反に伴う利用者の転倒・骨折事故

ケース2 デイサービス利用中の行方不明にかかる死亡事故

ケース3 介護サービス中の見守り義務違反による転倒・骨折事故

ケース4 老人保健施設における転落死亡事件

ケース5 老人保健施設における誤嚥による死亡事故

ケース6 特別養護老人ホームにおける誤嚥による死亡事故

ケース7 送迎中の転倒・骨折死亡事故

ケース8 ボランティアの見守り義務違反による転倒・骨折事故

ケース9 利用者同士のトラブルによる転倒事故の責任

ケース10 災害時の利用者の行動特性と今後の施設職員の対応

第3章 保育事故裁判事例とリスクマネジメント

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書籍情報

シリーズ名・巻数 福祉ライブラリ
書籍名 リスクマネジメントと福祉
著 者
分 野
シリーズ 福祉ライブラリ
ISBN 978-4-7679-3452-5
Cコード C3032
定 価 2,750円 (本体価格:2,500円)
発行年月日 2026年3月25日
版型・装丁 A5 並製
ページ数 208ページ
関連タグ