吃音の基礎知識,検査・評価法,臨床現場で実践されている訓練法の特徴や手法等を詳説し,症例も提示。発達性吃音以外の流暢性障害や,言語聴覚士の連携機関等についても解説した,吃音臨床の入門書。
内容紹介
まえがき
まえがき
2023(令和5)年には言語聴覚士有資格者が約4万名となり,以前に比べると言語聴覚療法を受けやすい環境になっている。しかし,吃音に対応している医療機関・施設が非常に少ないため,多くの吃音児・者が,専門家に相談することすらできずに苦しんでいる現状がある。言語聴覚士に話を聞いてみると,吃音臨床に携わりたくないということではなく,他の言語聴覚障害と同じように対応したいという思いはあるが,「何をやってよいのかわからない」「今の浅い知識・技術で対応すると状態を悪化させてしまうかもしれない」という声が多く,訓練の理論や方法等,吃音に関する知識・技術への不安が,吃音臨床に踏み出す一歩を躊躇させていると考えられる。吃音臨床に対する不安は,「原因が不明であるケースが多い」→「臨床実践を避ける言語聴覚士が増える」→「研究報告が増えない」→「吃音の改善メカニズムが明確にならない」→「何をすればよいかわからない」という悪循環によって生じている。
本書には,この悪循環に歯止めをかけ,好循環へ転換したいという思いが込められている。吃音発症の原因は不明な点が多いが,明らかになってきていることもある。また,「日本吃音・流暢性障害学会」の設立,「吃音臨床の手引き―初めてかかわる方へ 幼児期から学童期用―」作成など,近年,吃音を取り巻く状況が整備されはじめた。本書は,言語聴覚士養成校に通う学生や臨床を行っている言語聴覚士が吃音臨床をやってみよう,始めようと思ってもらう一助となることを目指して構成した。特徴の1つ目は,最新の情報を掲載していることである。2つ目として,臨床現場で実践されている訓練・指導・支援法の中から9種を取り上げ,それぞれの手法における第一人者がその手法の特徴を詳しく解説していること。そして,3つ目には,評価や訓練・指導・支援だけではなく,吃音臨床を実践することを踏まえて知っておいた方がよい連携方法,発達性吃音以外の流暢性障害,障害者手帳などの包括的な情報を組み込んでいることがあげられる。
吃音臨床の入門書として本書が大いに活用されることにより,言語聴覚士が訓練・指導・支援に積極的にかかわっていける状況が整い,ひいては吃音児・者が容易に相談することができるよりよい環境へとつなげていくことができれば幸いである。
2024年2月
池田泰子・坂田善政
目 次
第1章 吃音児・者が抱える苦悩
Ⅰ 吃音児・者を対象とする支援の現状
Ⅱ 吃音児・者が抱える苦悩を理解する
Ⅲ 吃音児・者の苦悩
Ⅳ 吃音児と保護者の気持ちを理解するために
第2章 吃音の基礎知識
Ⅰ 吃音の基礎知識
Ⅱ 吃音の発症とその後の経過
Ⅲ 吃音の原因論
Ⅳ その他の基礎知識
第3章 評 価
Ⅰ 臨床の流れと情報収集
Ⅱ 評価の枠組み
Ⅲ 評価の実際
Ⅳ 評価のまとめ
第4章 訓練・指導・支援
Ⅰ 各ライフステージにおける訓練・指導・支援の特徴
Ⅱ 訓練・指導・支援法の解説
第5章 連 携
Ⅰ 所属先(就学前施設,学校,職場)
Ⅱ 親・保護者の会
Ⅲ セルフヘルプグループ(SHG)
Ⅳ 言語障害通級指導教室(ことばの教室)
第6章 発達性吃音以外の流暢性障害
Ⅰ 獲得性神経原性吃音
Ⅱ 心因性吃音
Ⅲ 早口言語症(クラタリング)
第7章 症 例
Ⅰ 幼児期の吃音
Ⅱ 学童期の吃音
Ⅲ 思春期以降の吃音
Ⅳ RASS理論の症例
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