シードブック

三訂 子どもの社会的養護 ―出会いと希望のかけはし―

著 者
発行年月日
2019年2月1日
ISBN
978-4-7679-5089-1
Cコード
C3037
関連タグ
定価 2,200(本体価格:2,000円) 在庫あり

オンライン書店で購入

  • 紀伊国屋書店
  • honto
  • e-hon
  • HonyaClub
  • rakuten

建帛社で購入

 買い物カゴに入れる

内容紹介

保育者養成課程の「社会的養護Ⅰ・Ⅱ」の教科書。 子どもの社会的養護について,原理,内容・方法などを簡潔にまとめる。各施設,当事者の視点を大切にして考察。里親制度についても詳説する。 

まえがき

はしがき

 なんらかの事情により,家庭で親といっしょに暮らすことのできない子どもがいる。親といっしょに暮らすことができない事情としては,貧困を背景として,親の病気,事故,災害,失業,不和,行方不明,子どもの遺棄などがあり,時には戦争などによる両親との死別の場合がある。また,養育者がいたとしても経済的理由や長期入院その他の理由で養育力がない場合,あるいは子どもが特別なケアを必要とする病気や障がいをもっていて,家庭で子どもを養育することが困難となる場合もある。さらに,親が子どもを虐待している場合など,家庭環境が子どもの健全な発達にとって不適切である場合もある。

 このような事情により親といっしょに暮らすことのできない子どもに対して,家庭に代わって子どもを養育するしくみが社会的養護である。このしくみによって,家庭環境の如何にかかわらず,すべての子どもの生存と発達を確保することがめざされている。日本では,このいとなみに保育士や児童指導員などの施設職員さらに里親や児童福祉司などが子どもの生活の援助にあたっている。

 社会的養護のもとにある子どもは,親に代わって護り育ててくれる多くの大人たちとの出会いを体験する。また,それぞれの事情から生活を共にすることとなった同じ境遇の子ども同士の出会いもある。子どもの社会的養護のいとなみは,親といっしょに暮らすことができないという不幸な現実を,新たな出会いを通して希望につなげる「かけはし」の仕事であるといえる。

 本書は,未来の保育士を志す学生を対象としている。そのため,主として日本における子どもの社会的養護について,その原理や内容・方法を解説している。少子化の進行,子育て不安の拡大,さらに児童虐待の増加などを背景に子育て支援が大きな課題となっているこんにち,子どもの社会的養護の原理や内容・方法を学ぶことは,児童養護施設だけでなく,保育所をはじめとする多くの児童福祉施設においていまや不可欠の専門的素養となっている。

 本書の標題とした「子どもの社会的養護」とは,狭義には,親といっしょに暮らすことのできない子どもに対して,家庭に代わって子どもを養育するしくみのことである。国連の文書では‘Alternative Care of Children’という言葉が用いられており,日本語訳としては「代替養育」もしくは「代替的養護」という場合がある。また広義には,子どもにとって適切な養育をすることが難しい家庭に対して,可能な限り家庭で適切な養育ができるよう自治体が行う専門的な援助(ソーシャルワーク)を含めたしくみのことである。本書は,主として狭義の「社会的養護」について論じており,必要に応じて「代替養育」の用語を用いている。このしくみは,基本的には児童福祉法によってその体系が定められている。児童福祉法は,2016年の改正で,すべての子どもが「福祉への権利」の主体であること,その権利保障のいとなみは国連子どもの権利条約の精神に基づくことを明記した。さらにこの条約は,社会的養護に対する子どもの権利について明確に規定している。本書を通して,ひとりでも多くの保育士を志す学生が,子どもの権利に根ざした社会的養護について理解を深めていただければ幸いである。

 狭義の子どもの社会的養護は,児童福祉施設における養護(施設養護)と,養育を委託された家庭(里親またはファミリーホーム)における養護(家庭養護)に分類できる。また施設養護では,生活単位の小規模化や,施設の地域分散化した形態であるグループホームによる「家庭的養護」がめざされている。いま国の政策として,里親や永続的な家族関係としての養子縁組を大幅に増やし,施設養護の割合を減らしていく方向が示されている。そのような流れの中で,施設養護の現場で専門職の一員として働く保育士には,高度な支援ニーズを抱えた子どもへの援助をはじめ,家庭支援,里親との連携,子どものアフターケアなどにおいて,むしろこれまで以上に大きな役割が期待される。

 施設や里親のもとでくらしている子どもは,やがて家庭に帰り,あるいは社会に巣立っていくことになるが,引き続き援助を必要とするケースも少なくない。本書では,児童養護施設を中心としながらも,里親を含めた社会的養護の終結(措置解除)後の支援体制も含めて,子どもの権利保障のしくみ全体を網羅しながら社会的養護の全体像を示し,そのあり方を考える素材を提供したい。

  2019年1月

編者望月彰

目 次

第1章 子どもの社会的養護 

1.日本における子育ちの危機

2.子どもの権利としての社会的養護

3.子どもの社会的養護の本質

 第2章 日本における社会的養護のしくみ 

1.児童福祉法と社会的養護の制度

2.児童相談所の役割と社会的養護への経路

3.アドミッションケアとインケア

4.リービングケアとアフターケア

5.社会的養護の課題 

第3章 社会的養護に携わる専門職 

1.養護の必要な子どもの保護と自立支援の見立て

2.子どもの発達と自立支援の取り組み

3.子どもの生命と健康の保障

4.子どもの個別ニーズへの対応

5.健全で民主的な施設運営の確保

6.専門職倫理の確立 

第4章 家庭支援の理論と実践 

1.子育て困難家庭への支援行政のしくみとソーシャルワーク

2.DVケースへのソーシャルワークと母子生活支援施設

3.児童虐待ケースへのソーシャルワーク

4.少子化問題と子育て支援の諸施策 

第5章 家庭養護の理念と里親制度 

1.家庭養護の理念

2.里親制度の歴史

3.日本における里親制度の現状と課題 

第6章 乳幼児の生命と健やかな育ちの保障 

1.乳幼児の生命の危機

2.乳幼児の健康の確保

3.乳児院が果たしてきた役割

4.乳幼児の生活―発達保障と権利擁護

5.乳幼児期の社会的養護をめぐる課題 

第7章 児童養護施設の歴史と自立支援 

1.児童養護施設の歴史

2.児童養護施設の目的と役割

3.施設からの旅立ちと自立への課題 

第8章 非行のある子どもの自立支援 

1.非行とは

2.非行少年の発見,通告,送致

3.児童相談所と児童自立支援施設

4.家庭裁判所と保護処分

5.非行のある子どもの自立支援の課題 

第9章 心理的困難のある子どもの社会的養護 

1.心理的困難のある子どもたち

2.児童心理治療施設の目的と役割

3.児童心理治療施設に入所している子どもの自立支援

4.児童心理治療施設の課題と将来像 

第10章 知的・身体的障がいのある子どもの社会的養護 

1.障がいとは

2.障がい児施設の種類と機能

3.障がい児福祉における施設養護の今後 

第11章 社会的養護における子どもの権利擁護 

1.子どもの権利擁護とは

2.子どもの権利擁護が必要とされる背景 3.子どもの権利擁護をめぐる現状

4.子どもの権利擁護の展望 

第12章 当事者から見た日本の社会的養護 

1.施設で暮らす子どもの思い

2.当事者参加の時代

3.当事者から見た社会的養護の課題と展望

4.施設職員をめざす学生への期待

書籍に関する
感想・お問合わせ

下記フォームに必要事項をご入力いただき、一旦ご確認された上で送信ボタンをクリックしてください。
なお、ご返信さしあげるまでに数日を要する場合がございます。

書籍情報

シリーズ名・巻数 シードブック
書籍名 三訂 子どもの社会的養護
著 者
分 野
シリーズ シードブック
ISBN 978-4-7679-5089-1
Cコード C3037
定 価 2,200円 (本体価格:2,000円)
発行年月日 2019年2月1日
版型・装丁 A5 並製
ページ数 208ページ
関連タグ