腸内細菌―宿主のクロストークと食事要因

著 者
発行年月日
2019年5月15日
ISBN
978-4-7679-6211-5
Cコード
C3047
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専門書

定価 4,730(本体価格:4,300円) 在庫あり

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内容紹介

ヒト腸管には数百種の常在菌が約40兆個棲息しており,これら腸内細菌は宿主と共生しながら,腸管のみならず生体の恒常性維持に寄与する。21世紀に入り,多くの疾患発症の要因の1つとしてこの共生の乱れがクローズアップされ,消化管は今最もホットな研究分野となっている。

本書は,腸内細菌と宿主との共生の仕組みについて,境界組織,代謝産物および細胞間情報伝達システムを介したクロストークを中心にまとめる。

  

まえがき

序  文

 ヒト腸管には数百種の常在菌が約40兆個棲息しており,これらの腸内細菌は宿主と共生しながら,腸管のみならず生体の恒常性維持に寄与している。この共生の仕組み(腸内細菌―宿主のクロストーク)の破綻は炎症性腸疾患,アレルギー性疾患や肥満,生活習慣病などの慢性炎症を介した代謝性疾患の発症を惹起すると考えられているが,食物繊維のみならずさまざまな食事要因が腸内細菌―宿主のクロストークを修飾することも明らかになってきた。21世紀に入り,あらゆる疾患発症の要因のひとつとして,この共生の乱れがクローズアップされ,消化管は今最もホットな研究分野となり,多くの研究者が細菌学的,免疫学的,分子生物学的等のさまざまな手法を取り入れ,この領域の研究が盛んに進められている。このような背景のもと,第72回日本栄養・食糧学会大会(2018年5月,岡山県立大学)では,腸内細菌と宿主との共生の仕組みに焦点を当てた2つのシンポジウム「腸内細菌―宿主のクロストークとそれを修飾する食餌要因」と「腸内細菌の代謝産物を介した宿主とのインタラクション」が企画された。本シンポジウムでは,「発酵代謝産物」,「腸内細菌」,これらによって修飾される「消化管免疫」,「消化管内分泌系」,「慢性炎症性疾患」の各分野から最新の知見に基づく講演が行われ,熱心に議論された。本シンポジウム後,本分野の重要性が再認識され,消化管と健康・栄養に関する最新の知見が得られる書籍が強く要望されるに至った。

 本書は,本シンポジウムの関係者をはじめとして,他の特別講演者や関連する分野で最先端の研究を進めておられる先生方に執筆をお願いし,腸内細菌―宿主のクロストークについて「境界組織」,「腸内細菌の代謝産物」および「宿主の細胞間情報伝達システム」を介したクロストークを中心とした内容から構成した。本書は,腸内細菌と宿主との共生の仕組みに関連する最先端の研究内容をできるだけわかりやすく記述するように努め,栄養学・食品学,医学,歯科学,農学,薬学等の関連領域の専門家だけでなく,学部学生,大学院生,管理栄養士・栄養士,医師,歯科医師,さらには食品・製薬企業の研究者に対して,教育・研究などに広く役立つものと自負している。

 本書の趣旨にご賛同いただき,ご多忙のなか,短期間に最新の知見をご執筆いただきました著者各位に感謝致しますとともに,出版物として本書を刊行するに際して多大なご尽力をいただきました(株)建帛社に深謝申し上げます。

  2019年4月

責任編集者  森田達也

園山 慶

辻 英明

目 次

序章 ブラックボックスへの探針と光明

1.食べるという生命活動と消化管

2.細菌生息の場としての消化管

3.腸内細菌と宿主との食物の共有と共生

4.腸内細菌と宿主との複雑な関係

5.ヒトの腸内細菌叢

6.ヒト腸内細菌叢と食事因子

7.ヒトの腸内細菌叢と宿主の健康

第1編 境界組織におけるクロストーク

第1章 宿主―腸内細菌の相利共生関係を支えるムチン

1.はじめに

2.ムチン糖鎖とムシナーゼ(ムチン分解)活性

3.ムチンの消化管内動態とin vivoでの資化性

4.Akkermansia muciniphilaを特異的に誘導するエイ由来ムチン

5.おわりに

第2章 腸粘膜組織における生理的炎症―オリゴ糖摂取時の腸管IgA分泌応答に関連して

1.はじめに

2.FOS摂取時の大腸発行パタンとIgA分泌応答との関連性

3.FOS摂取によるIgA分泌促進機序の解析

4.おわりに

第3章 食物繊維による腸管タイトジャンクションバリアへの作用

1.腸管バリアの構造と健康とのかかわり

2.食物繊維の摂取と大腸炎マウスのTJバリア

3.SCFAとTJバリア損傷

4.食物繊維の摂取と慢性腎臓病マウスのTJバリア

5.慢性腎臓病における腸管TJバリア損傷

6.慢性腎臓病と腸内フローラ

7.おわりに

第2編 腸内細菌の代謝産物を介したクロストーク

第4章 大腸内短鎖脂肪酸の吸収と代謝―13C呼気分析法による解析

1.13C呼気分析法

2.[1-13C]SCFAを大腸内投与後の[1-13C]の体内動態の解析

3.大腸内環境を変化させた場合の大腸内に投与した[1-13C]SCFAの代謝

4.おわりに

第5章 盲腸静脈血,門脈血,末梢血中の濃度から予測する大腸内短鎖脂肪酸生成量

1.はじめに

2.腸内細菌が賛成するSCFAは,さまざまな要因で変動する

3.SCFAの腸内粘膜からの吸収と腸内粘膜の応答

4.粘膜上皮から吸収されたSCFAの行方

5.ルミナコイド給与による大腸でのSCFA吸収

6.成長・発達に伴うSCFA吸収の変化

7.末梢血中に酪酸が認められた場合の危険性

8.おわりに

第6章 炎症性腸疾患における腸内代謝物の異常とそのメカニズム

1.はじめに

2.腸内細菌叢と大腸免疫系の関係

3.SCFAによる腸内環境制御作用

4.腸内環境制御における粘液層の役割

5.炎症性腸疾患における腸内代謝異常の解析

6.おわりに

第7章 大豆イソフラボン代謝産物エクオールと腸内細菌

1.大豆イソフラボン

2.大豆イソフラボンの代謝とエクオール産生

3.大豆イソフラボンの安全性と機能性

4.エクオール産生を促進させる食品および食品成分

5.腸内細菌と骨代謝―最近の動向

第8章 大腸水素によるin vinoレドックス制御とその生理的意義

1.はじめに

2.H2生成に及ぼす腸内細菌と難消化性糖質の影響

3.全身にデリバリーされる大腸H2

4.大腸H2による産かストレス軽減

5.おわりに

第3編 宿主の細胞間情報伝達システムを介したクロストーク

第9章 自己免疫疾患の発症を制御する短鎖脂肪酸

1.はじめに

2.RAの発症要因

3.RAとdysbiosis

4.自己免疫増幅器官としての腸管関連リンパ組織

5.短鎖脂肪酸によるRAの抑制

6.おわりに

第10章 難消化性糖質の消化管内分泌系への作用

1.はじめに

2.消化管内分泌系

3.栄養素による消化管ホルモン分泌

4.難消化性糖質と消化管ホルモン

5.血中のGLP-1濃度が増加するには,多段階の事象がかかわる

6.難消化性糖質の多様なメカニズム

7.非代謝性単糖の作用

8.おわりに

第11章 腸内細菌の健康機能を媒介する細胞外小胞―エクソソーム

1.はじめに

2.エクソソームとは何か

3.肥満およびメタボリックシンドロームを抑制すつプロバイオティクス

4.No.14 株の肥満および炎症抑制作用を媒介するエクソソーム

5.エクソソームの作用機序としてのmiRNAによる遺伝子サイレンシング

6.おわりに

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書籍情報

シリーズ名・巻数
書籍名 腸内細菌―宿主のクロストークと食事要因
著 者
分 野
シリーズ
ISBN 978-4-7679-6211-5
Cコード C3047
定 価 4,730円 (本体価格:4,300円)
発行年月日 2019年5月15日
版型・装丁 A5 上製
ページ数 264ページ
関連タグ