はじめに
日本人を対象とした,あらゆる栄養に関わる業務において,「日本人の食事摂取基準」を適切に理解・活用することは不可欠です。本書は,より実践的な場面における活用・適用方法とその留意点を具体的に示すことを目的として刊行しました。
日本人の食事摂取基準は,健康増進法の規定により,5年ごとに改定が行われています。2010年の改定に際しては,活用の基礎理論の中で「給食管理」(特定の集団に対する食事計画とそれに基づく適切な品質管理による継続的な食事の提供及び摂取状況等の評価)に関する記述がなされていました。しかし,2015年以降の改定に際しては,活用の基礎理論として給食管理に特化した項目立てや記載はない状況が続いています。このようなことから,特定給食施設等や保健所などの行政機関に勤務されておられる若手の方々,他分野から異動された皆様では,給食施設の特徴・分野別にどのような対応を取ることがより望ましいのか,参考となる書籍のニーズが依然として高いように感じられます。
さらに,栄養管理や給食管理業務には継続的な取り組みが求められますが,そこには,対象者や対象集団の栄養改善を目的とした視点と,管理栄養士・栄養士の業務改善を目的とした視点があり,いずれもマネジメントサイクルに沿った対応を行うことが望まれます。しかし,これまでに公表された報告や関連書籍では,両者の整理は必ずしも十分ではなく,第一線の現場での実践理論の構築には未だ不安な要素が残っています。
そこで本書は,単なる「虎の巻」ではなく,PDCAサイクルと「日本人の食事摂取基準」による栄養管理・給食管理を現場で具体的に実践するための考え方や留意点などをできるだけ詳細に示すことを目標とした編集方針をとっています。したがって,本書を利用される方は「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の報告書を必ず手元に置いていただき,関連書籍を含め,基本的な事項についての整理と理解をしておいていただきますようにお願い致します。
本書は,2011年刊行の『 PDCAサイクルと食事摂取基準による栄養管理・給食管理』,およびその改訂版として2015年に刊行された『食事摂取基準による栄養管理・給食管理―PDCAサイクルの実践―』に続く最新版です。今回は,日本人の食事摂取基準(2025年版)への対応のため,内容を刷新するとともに書名も改めております。
なお,食事摂取基準の活用については実践的な研究報告が少なく,科学的根拠が不足している分野です。このため,本書の記載内容には,実践現場においては広く知られているものの,現時点では必ずしも十分な科学的根拠が得られていない内容も含まれていることをご承知おきいただきたいと思います。むしろ,記載内容について批判的に検証していただき,実践に関する新たな根拠を積み上げていくことが,日本の管理栄養士・栄養士の資質向上や次期食事摂取基準の策定に寄与するものと考えています。
編集に際して,本文中の用語はできるだけ統一するように務めましたが,「評価」と「アセスメント」については,異なる受け取られ方があるため,何れか一方に合わせることは致しませんでした。概ね前者は目標と結果を比較して実施した結果が適切であったかの判断,後者は現状(実態)を調べ,目標や基準等と比較し課題を明らかにすることという形で区別しております。食事摂取基準は栄養素摂取量の適否を判断する基準となるもので,アセスメントにおいても評価においても活用しますし,またアセス メントや評価の結果を受けて対象者や対象者集団の摂取量の目標値を決定するためにも使われます。
最後に,本書の刊行に際し,管理栄養士・栄養士の食事摂取基準の活用に関する悩みを理解し,ディスカッションならびに執筆にご協力いただきました著者の皆さまに感謝申し上げます。本書の質的な向上を目指すため,これまでと同様に,皆さま方からの前向きなご意見をお待ちいたしております。
2025年7月
由 田 克 士
石 田 裕 美