平成20年9月1日
介護福祉士養成カリキュラム改正の趣旨
厚生労働省社会・援護局 福祉基盤課介護技術専門官 習田 由美子この著者の書いた書籍
昨年3月に国会に提出した「改正社会福祉士及び介護福祉士法案」は,二回の国会審議を経て平成19年12月5日公布となった。今回の改正は,平成16年の社会保障審議会介護保険部会での議論や平成17年改正介護保険法の審議の中での,介護職員の資質の向上が必要との議論が直接的なきっかけとなった。この見直しは,制度創設以来20年経って初の見直しとなり,社会が求める介護福祉士像を再確認する機会になったと考えている。
平成18年7月「介護福祉士のあり方及びその養成プロセスの見直し等に関する検討会」報告書の中で,介護福祉士が生涯をかけて目指すべき12の求められる介護福祉士像を明示している。
①尊厳を支えるケアの実践。 ②現場で必要とされる実践的能力。 ③自立支援を重視し,これからの介護ニーズ,政策にも対応できる。 ④施設・地域(在宅)を通じた汎用性ある能力。 ⑤心理的・社会的支援の重視。 ⑥予防からリハビリテーション,看取りまで,利用者の状態の変化に対応できる。 ⑦多職種協働によるチームケア。 ⑧一人でも基本的な対応ができる。 ⑨「個別ケア」の実践。 ⑩利用者・家族,チームに対するコミュニケーション能力や的確な記録・記述力。 ⑪関連領域の基本的な理解。 ⑫高い倫理性の保持。
このような介護福祉士を養成するために必要な教育内容を充実させるため,教育カリキュラム等の見直し(平成21年4月1日施行)を行っている。
今回の見直しは,今までの17科目に,現代社会のニーズに応えられるような要素を含め,介護が実践の技術であるという性格を踏まえて,〔人間と社会〕,〔介護〕,〔こころとからだのしくみ〕 の三領域に教育体系を再編している。新カリキュラムのポイントは介護に必要なという観点から,領域 〔こころとからだのしくみ〕 と領域 〔介護〕 の「生活支援技術」「介護過程」との重複や役割分担などの関連づけを明確にし,カリキュラムを組み立てることである。
具体的には,医学的な切り口ではなく,生活を支援するという観点から,各生活支援技術に必要なこころとからだのしくみの知識を組み立てた教育内容や,「介護過程」では介護現場で遭遇するさまざまな事例を想定し,他の領域で学ぶ知識を活用し,利用者の状況をアセスメントし,適切な介護を導き出し,実際に介護を行い,評価,実施という過程をより多くの事例から学ぶことなど,工夫をしていただきたい。このことによって,〔人間と社会〕 や 〔こころとからだのしくみ〕 で学んだ知識を活用するという体験を通して,将来,介護現場で実際に活用できる知識として習得することができる。
また,今回のカリキュラム改正では,教育内容と時間数,各教育内容に含むべき事項は基本的な枠組みとして示しているが,それ以外については各養成校の自由裁量となっている。各校が掲げる教育理念や教育目的を達成するために必要な教育内容を設定,編成することができる。
今回のこれらの改正については,国家試験のあり方の検討会が行われ,実務経験ルートの6か月の教育内容等の省令改正を行って,一旦締めくくりになるが,研修等の見直しは今後も引き続き行っていく予定である。
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