平成25年1月1日
管理栄養士の国際化の必要性について
神戸女子大学教授 瀬口 正晴この著者の書いた書籍
2010年6月,フィンランドでグルテンフリーの国際会議があり,出席してきました。参加者は数百人の大きな学会でした。
この会は小麦粉中のグルテンタンパク質が引き起こすセリアック病に関する学会です。欧米では人口の1%強の人が亡くなるという病気です。患者さんはグルテンを含む食品は一切食べられません。その原因の追及や,対策などに関する学会で,食の欧風化が進みパン食の進む日本でもこれから問題になる大きなテーマです。
発表の様子から,グルテンフリーへの関心の深さをうかがうことができました。医師,化学者,食品企業の人たちなど,多くの分野の人たちで活発に議論が行われました。その中に若い女性管理栄養士の発表者がいたことが意外でした。帰国後,小生のゼミ学生らにその様子を話し,「君らもあのようにならねばいけない」と激励したのですが,現実味がなかったのでしょうか,笑っていました。
国際的に活躍できる管理栄養士もこれから必要になってくるでしょう。しかしそこで問題となるのは語学でしょう。各大学,四年間の管理栄養士のカリキュラムの中には教養科目としての外国語科目はあります。しかし管理栄養士の専門科目は逼迫しており,しかもその中には必須の語学に関するカリキュラムは皆無なのが現状です。学生は高等学校でかなり英語を勉強してきたはずですが,続けていないと英語などすぐに忘れてしまいます。
神戸女子大学では,管理栄養士養成課程の病院実習先の一つとして,ハワイ・ホノルル市のクワキニ病院にお願いしています。2002年から毎年2名の学生を派遣し実習をお願いしています。管理栄養士の国際化のいいチャンスだと思って続けています。病院では日本の若い女子学生が来るということで大変に喜ばれていますが,毎年最後に先方から言われるのは,もう少し英語のできる学生を送ってください,栄養士の専門英語の勉強も,ということです。
クワキニでの二週間は英語だけの生活で,指導も英語で受けています。大変に効果的です。この先方からの語学訓練の要望に対し,本学ではカリキュラム的には全く対応しておらず,自主的に数か月間昼休み時間に英語教員に指導を受けさせています。英語力,語学力のなさを残念に思っています。
これから管理栄養士の国際的ニーズが必ずやってきます。大学,大学院のカリキュラムで専門英語教育が必要です。特にスポーツ栄養関係では必要になってくると思われます。英語のしゃべれない管理栄養士が,果たしてスポーツ等の国際大会で他国の管理栄養士とわたり合えるのでしょうか? Completely Noでしょう。日本の医療技術が進んでいることと,それに伴う日本の管理栄養士の技術の深さがこれからの日本の売り物にもなるのではないでしょうか。やはり国際化が必要です。
早々に厚生労働省なども英語教育を熟慮し,管理栄養士カリキュラムの中に専門英語教育のカリキュラムを入れることに取り組んでいただきたいものです。
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