令和2年1月1日
地球の存続は私たちの手に!
文教大学 教授 松村康弘この著者の書いた書籍
「How dare you? …(よくもまあ…できるものだ)」というのは,昨年ニューヨークで開催された国連気候行動サミットで,スウェーデンの若き環境活動家グレタ・トゥンベリさんがスピーチの中でよく使った言葉である。地球の気候が危機的状況にあることは,すでに多くの科学者が指摘することであり,そのための対策の強化を訴えたのである。
地球環境の劣化に関する指摘は以前よりなされていたが,それに対して1987年に環境と開発に関する世界委員会が公表した報告書「Our Common Future」(ブルントラント報告)の中心的な考え方とし,持続可能な開発という概念が取り上げられた。この概念は環境と開発を互いに反するものではなく共存し得るものとして捉え,環境保全を考慮した節度ある開発が重要であるとの考えに立つものである。人類が地球環境にかける負荷を極力小さくし,繁栄を続けるための前提条件のフレームワークとして,プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)を,ストックホルム・レジリエンス・センターのヨハン・ロックストローム(現在はポツダム気候影響研究所ディレクター)とオーストラリア国立大学のウィルステファンが主導する地球システムと環境科学者のグループが提案した。
これは,国連の持続可能な開発目標(SDGs)にも反映されている。そこでは,超えてはならない境界領域として,気候変動,生物多様性の欠損,土地利用の変化,海洋酸性化,窒素とリンの循環,グローバルな淡水利用,成層圏オゾン層の破壊,大気エアロゾルの負荷,化学物質による汚染の九領域が示されており,気候変動,生物多様性の損失,土地利用の変化,窒素とリンの循環の四領域では,すでに境界に達していると指摘されている。
気候変動についてみれば,昨年の気候変動に関する政府間パネルの特別報告書では,地球温暖化が促進され,熱帯低気圧の強度の増大,降水量の増加により頻繁に災害が発生すると警告している。まさに,昨秋日本を襲った台風15号・19号による災害がこれに当たるのではないだろうか。今後も同様の災害が発生する可能性は十分に高い。
しかし,米国のトランプ大統領は,このような科学的なデータを積み上げた報告書があるにもかかわらず,地球温暖化などないと主張している。これは彼に限ったことではなく,世界の50%ほどの人々が,地球温暖化に人類が関与しているとは信じていない。
科学的データをどのように解釈するのかは,単純ではないことが認知神経科学で示されている。科学者は同じデータを読めば他の誰もが同じように解釈すると思っているが,現実はそうではないようである。
あなたはどのように考えますか?
昨年の台風被害を目の当たりにした者としては,地球温暖化を食い止めるために,国や行政レベル,企業レベル(ESG投資,グリーン投資,責任銀行原則等)のみでなく,我々個人レベルでの取り組みが急務であると考えるのは当然ではないだろうか。
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