はじめに

　管理栄養士は，小児から高齢者，そして傷病者および障がい者から健常者まで，すべての人を対象として，その個人の栄養・食生活に関する問題や課題を評価し，栄養状態を判定する。さらに，多くの専門職種と連携して，教育や環境の側面から適切な支援や活動を計画・立案し実施する。ここで重要なことは，対象となる人の栄養上の問題を見抜く力であり，その原因・要因に対して介入し問題解決することである。そのためには，標準化された栄養管理を実践すること，栄養管理を提供するための過程を順序立てて実施していくこと，つまり，栄養管理プロセス（栄養ケアプロセス）を適切に実践することが必要となる。

　今回，栄養管理の経験が少ない学生向けに，管理栄養士養成校において栄養管理プロセスが学修できるテキストを作成した。

　本書は，第Ⅰ部の総論では，基本事項として栄養管理の意義と栄養管理プロセスを構成する用語や概念の理解に重点を置き，第Ⅱ部では，臨床栄養管理の実際として，具体的な栄養管理プロセスの手順を解説するとともに，栄養食事指導報告書，栄養管理計画書への記載についても触れている。第Ⅲ部は，「管理栄養士養成のための栄養学教育モデル・コア・カリキュラム」にある疾患と栄養管理の実践の学修を踏まえて，16 疾患を2 症例ずつ示した。症例1 では栄養管理プロセスの基本を学び，症例2 では症例1 での学びを活かして実際に演習できるよう症例のみを記載した。さらに，ルーブリックで自身の学びの到達度を理解し，ステップアップできるように構成してある。巻末には，付録：解答例として，第Ⅲ部の症例2 の解答例を示した。この解答例はあくまでも1 つの例であることを理解したうえで，演習の後で確認してほしい。

　なお本書は，経験浅い学生が栄養管理プロセスの手順を理解・実践することを目的としているため，①単純な症例かつ検査値等は必要な項目のみをわかりやすい数値で示してあること，②病態や治療等は他の教科書や専門書で確認する必要があること，をご理解いただきたい。

　筆者は，臨床での経験が豊富で，現在は管理栄養士養成校において臨床栄養教育の現場で活躍されている先生方に学生目線でご記述いただいた。

　本書により，学生が栄養管理プロセスを修得し，実践できることを期待している。また，本書が21 世紀を担う高度な専門職の養成の一助となれば幸甚である。

　最後に，お忙しいなか，執筆いただいた先生方に心より感謝申し上げる。また，出版にあたりご尽力いただいた建帛社編集部の方々に深謝する。

　2020 年1 月

編著者　永井　徹・長谷川輝美