まえがき
本書は,教職課程の「教育相談」に関する科目を履修する大学生・短期大学生を対象にしたテキストです。本書を作成するにあたって次の 4 つの点を考慮しました。
1 つめは,2019 年に導入されたコアカリキュラムにおいて,「教育相談(カウンセリングに関する基礎的な知識を含む。)の理論及び方法」の授業では,「学校における教育相談の意義と理論を理解する」「教育相談を進める際に必要な基礎的知識(カウンセリングに関する基礎的事柄を含む)を理解する」「教育相談の具体的な進め方やそのポイント,組織的な取組みや連携の必要性を理解する」という,3 つの一般目標が提示されていることへの対応です。これらの一般目標には,それぞれさらに詳細な到達目標が定められています。本書は,このようなコアカリキュラムに定められた諸目標に沿い,これらを網羅したテキストとなるようにしました。
2 つめは,時代のニーズとして大学等の授業に変化がみられ,いわゆるアクティブラーニングなど学修者自身による主体的な学びが推奨されるようになった点への配慮です。従来の講義型の授業とは違い,学修者が能動的に授業に参加する形態の授業が求められるようになったことから,本書では各章の中に「演習課題」や「実践演習」を設けて,学修者同士で効率よくグループワークを進められるような工夫をしました。
3 つめは,現在の教育現場が抱えている課題が多様化してきたことです。特に,貧困家庭,児童虐待,LGBTQ,日本語指導を必要とする児童生徒,障害のある児童生徒に対する合理的配慮などが重要な課題として取り上げられています。このように児童生徒を取り巻く課題が複雑になる中で,教員にはこれらの問題へ適切に対応する力が求められます。このような近年取り組みが不可欠とされる課題についても,本書で学べるようにしました。
4 つめは,カウンセリングに関する技法が多様になり,アプローチの手段が広がったことがあげられます。従来の教育相談のテキストでは,カウンセリングの知識として,来談者中心療法,精神分析療法,行動療法について概説したものが多いのですが,近年,教育現場で注目されているソーシャルスキルトレーニングやストレスマネジメント教育,アンガーマネジメントなどについてはほとんど触れられていません。そのため本書は,学修者が教職に就き実際に教育相談を行う時に,最低限,習得しておいてもらいたいと考えられるカウンセまリングに関する知識を掲載したテキストにしました。
これら 4 つ以外にも,当然,教育現場において求められる知識や技術,児童生徒の発達上の諸課題などを網羅していく必要があります。そうした内容も含めつつ,15 回の授業を展開できる形で本書を構成しました。
このような編集方針のもと,各大学の教職課程等で教鞭をとる執筆陣のご尽力により,コアカリキュラムに沿って,教育相談に関する必要不可欠な知識を盛り込んだバランスのとれたテキストを刊行できたことを感謝申し上げます。本書が,教職を目指す多くの大学生・短期大学生に教育相談のテキストとして活用されることを願っております。
2026 年 1 月
編著者 小泉 晋一
鈴木 聡志