各章に「アウトライン」の頁を設け,初学者が要点を把握して概要を俯瞰しながら学習できる,「社会的養護Ⅰ・Ⅱ」のテキスト。最新の動向をふまえ,前身である『子どもの養護』からリニューアルを図った。
内容紹介
まえがき
は し が き
2017(平成29)年,「新しい社会的養育ビジョン」が厚生労働大臣の諮問によりまとめられた。前年の児童福祉法改正をふまえ,乳幼児の家庭養育優先原則の徹底などが示されている。自立支援においてはケア・リーバー(社会的養護経験者)の実態を把握することが明記されるなど,子どもの姿を尊重する方針が重視されている。さらに2022(令和4)年の改正では,児童自立生活援助事業の拡充により,必要に応じて施設内で年齢制限なく支援を行うことが示された。また,一時保護所の環境改善や子どもの意見聴取の新たな仕組みが構築された。このように社会的養護の分野では,子どもの権利擁護のための取り組みが年々,充実している。
こうした時代の流れをふまえ,保育士養成課程において我々がすべきことは,適切な価値意識と専門性をもつ職員を養成することである。そのため本書は,保育士養成課程における「社会的養護」,「社会的養護」,および保育所以外の施設で行う「保育実習」,「保育実習指導」において使用することを想定し,次のように構成した。
第1章から第4章では,社会的養護の基盤となる部分について説明しており,社会的養護の基本的な視点を理解することを目的としている。
第5章から第7章では,日本における社会的養護の制度や法体系,職員について説明しており,社会的養護の仕組みを理解することを目的としている。
第8章から第14章では,社会的養護の現場における具体的な取り組みや専門性について説明しており,現場で求められるスキルの理解を目的としている。
本書の前身である『子どもの養護』は,1997(平成9)年,当時の「養護原理」「養護内容」科目の双方を網羅するテキストとして初版を発行した。以来,法制度や社会状況に合わせて版を重ねながらも,社会的養護の理論と実践を学ぶ教科書としてのコンセプトが変わることはなく,2018(平成30)年にはi新たな保育士養成課程科目に合わせて,「社会的養護」,「社会的養護」に対応する改訂を行った。そして今般,先述した内容へと改めるにあたって,新たに執筆陣を迎え,『はじめて学ぶ子どもの養護』と書名も新たにして刊行した次第である。
家庭の実態,社会の状況が変化すれば,子どもが置かれる状況も大きく左右される。社会的養護の役割も,それらに応じて変化してきたし,新たな課題が生じれば敏感に対応していかなければならない。そうした社会的養護を取り巻く変化の中にあっても,保育士養成課程における我々の使命は,先述したように適切な価値意識と専門性をもつ職員の養成であることに変わりはない。本書がそのための学びの一助となり,その学びが「子どもの最善の利益」へつながっていくことを願ってやまない。
2025年3月
編者 和田上貴昭
坪井 真
目 次
第1章 社会的養護の基本的考え方
1 社会的養護とは
2 権利擁護の観点から社会的養護を考える
第2章 子どもの社会的養護の歴史
1 欧米における児童福祉観の変遷と子どもの社会的養護
2 日本における児童福祉観の変遷と子どもの社会的養護
第3章 社会的養護の対象理解
1 養護問題発生理由
2 家庭環境による影響
第4章 社会的養護の理念と基本的原則
1 社会的養護の基本理念
2 里親・ファミリーホームの運営と基本的原則
3 施設の運営と基本的原則
第5章 子どもの社会的養護の制度と実施体系
1 子どもの社会的養護の体系
2 施設擁護の概要
3 家庭擁護の概要
4 社会的養護を支える法律
第6章 児童福祉施設の運営・管理
1 児童福祉施設の基準と制度
2 児童福祉施設の設備と職員配置
3 措置費の適切な執行と会計処理
4 施設擁護における運営・管理
第7章 社会的養護の専門職
1 生活支援を担当する専門職とその役割
2 相談支援等を担当する職員とその役割
3 その他の専門職とその役割
4 専門職による連携
第8章 施設擁護・家庭擁護の生活特性と日常生活支援
1 施設擁護における生活と支援
2 家庭擁護における生活と支援
第9章 治療的支援・自立支援・家庭支援
1 治療的支援
2 自立支援
3 家庭支援
第10章 社会的養護における支援計画
1 計画立案の意義
2 計画立案のための情報収集とアセスメント
3 計画立案の方法
4 支援の見直し
第11章 虐待問題と子どもの養護
1 増え続ける児童虐待
2 児童虐待と家庭・施設の実態と支援
3 虐待された子どもへの対応
第12章 社会的養護における基本的な援助技術
1 ケア・ワーク
2 個別援助技術
3 集団援助技術
4 連携(職員間・専門職間)
5 子どもの心理療法
第13章 施設擁護の実践紹介
1 児童養護施設
2 障がい児を対象とする施設
3 障害者支援施設(障害福祉サービス事業所)
4 障害福祉サービス事業所(主に日中のサービス)
5 児童自立支援施設
第14章 福祉施設実習に向けて
1 福祉施設実習の目的
2 記録および自己評価
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