食品機能研究において,食品中(フード)の化学物質(ケミカル)が生体機能(バイオロジー)を制御することを示す新たな学問分野「フードケミカルバイオロジー」。また近年,キープレーヤーとしてmiRNAのような核酸分子も注目されている。
化学の視点から食品機能研究の展望を伝えるために,フードケミカルバイオロジーの今を研究結果や動向を通じてその魅力と可能性を紹介する。食品機能研究,機能性食 品開発に携わる研究者にとって最新研究動向に触れる必携の一冊。
食品機能研究において,食品中(フード)の化学物質(ケミカル)が生体機能(バイオロジー)を制御することを示す新たな学問分野「フードケミカルバイオロジー」。また近年,キープレーヤーとしてmiRNAのような核酸分子も注目されている。
化学の視点から食品機能研究の展望を伝えるために,フードケミカルバイオロジーの今を研究結果や動向を通じてその魅力と可能性を紹介する。食品機能研究,機能性食 品開発に携わる研究者にとって最新研究動向に触れる必携の一冊。
序 文
1993年 にNature誌 で「Japan explores the boundary between food and medicine(日本で食と薬の境界に切り込む)」と題した記事が発表されてから,約30年が経過した。この間,多くの食品と健康に関わる現象が発見され,「食品機能」という学術用語が一般化するとともに,ひとつの科学を築いてきた。抗体医薬をはじめとして,薬は分子標的や作用機序を描きながら開発を進めていくのに対し,食品機能は得られた
効果から作用機序を逆算する世界である。この30年間に,種々のオミクス解析を始めとする分析技術,イメージング技術,次世代シーケンシングによる網羅的な遺伝子解析など,多くの最先端技術が著しい進化を遂げてきた。これらの技術は,食品機能の作用機序を分子レベルで説明する手段として,科学から化学へと研究を加速させてきた。
近年では,食品機能を説明できる分子の特定も進み,その中でも植物由来の生理活性分子は「ファイトケミカル」と総称される。一部のファイトケミカルでは生体分子との相互作用が証明され,食品機能との関係性が明快に示されている。このような分子間の関係性を読み解くことは,食品機能研究を深化させるマイルストーンであり,食品中の化学物質(ケミカル)が生体機能を制御することを示す新たな学問分野「フードケミカルバイオロジー」における大きな柱となっている。また,新たなキープレーヤーとしてマイクロRNA(miRNA)のような核酸分子も注目されている。食品由来の異種miRNAの機能や,ヒトにおけるmiRNA発現調節を介した機能性の発現に関する研究が黎明期を迎えており,核酸分子の運搬体となりうる細胞外小胞の実態に迫る研究も進行中である。
2024年5月に福岡市で開催された第78回日本栄養・食糧学会大会(会頭:立花宏文)において,「食品機能性を担う細胞外小胞とマイクロRNA」,「ファイトケミカル研究の最前線」と銘打った2件のシンポジウムが企画された。これらのシンポジウムでは計8題の講演が行われ,食品機能研究の深化によって明らかになった「食品成分の特異的な“ふるまい”」が紹介され,多くの学会員との活発な質疑応答が繰り広げられた。
本書では,最初にフードケミカルバイオロジーの概説を行い,続いて上記のシンポジウムでの講演内容を中心に,最新の話題を具体的なデータとともに紹介する。本書の狙いは,化学の視点から食品機能研究の展望を伝えることにある。フードケミカルバーオロジーの今を最新の研究結果や動向とともに紹介することを通じて,本分野の魅力と可能性に触れていただきたい。ケミカルバイオロジーは化学と生物の境界・融合領域の学問であり,フードケミカルバイオロジーの進展には多様な学問分野の研究者が持つ叡智と技術の集結が欠かせない。ぜひ本書が多くの分野における学生,研究者の座右に置かれ,食品機能研究が大きな裾野を持つことを期待したい。
最後になりますが,本書の刊行に際し,ご多忙の中,快く執筆をお引き受けいただいたシンポジスト各位に深謝申し上げます。また,本書を刊行するにあたり多大なご尽力をいただいた,株式会社建帛社の筑紫和男氏をはじめとする関係者の皆様方に心より感謝を申し上げます。
2025年5月
責任編集者 山﨑正夫
藤村由紀
榊𠩤啓之
立花宏文
〔主な項目〕第1編 食品を基盤とするケミカルバイオロジー(全5章) 第2編 フードケミカルバイオロジーに関わる細胞外小胞とマイクロRNA(全5章)
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