建帛社だより「土筆」

平成23年1月1日

大学案内冊子に託した東京家政大学の願い

東京家政大学進路(入試・就職)支援センター部長 岩井 絹江この著者の書いた書籍

 「文字を読むことが好きな人に入学してほしい」そんな思いから,十数年工夫して作成してきた東京家政大学の案内冊子。この冊子は,A5サイズが二冊,『大学で何を学び卒業後どう生きるか』458ページ,『合格応援Book』322ページ,両方で2.5センチの厚さがある。なぜ,こんなに厚いの? と聞かれることも多く,賛否両論ある中,イメージでなく大学で何を学び将来どう生きるかをしっかり考える女子に入学してほしいという東京家政大学の願いを込めているのがこの冊子である。

 から20年近く前,まだ新米入試課長だった頃,広報業者より,大学案内冊子に『mf=メッゾ・フォルテ』 というニックネームを付け,写真を多用して,手にとってもらいやすいように薄くして大学のイメージアップを図りませんかという提案が何度もあった。その頃の18歳人口は205万人あり高学歴志向や臨時定員増にのって大学をイメージで売る,ビジュアルプレゼンテーションがもてはやされ,イメージの良い他大学は志願者を大きく増やしていた頃でもあったが,本学は過去に比べ志願者は伸びている状況ではなかった。

 んな中,十数年前から私たち入試担当者は高校の教育現場が大学に求めていることを理解するために全国の高校を訪問し,高校の情報を集めることに力を注いでいた。東京家政大学の学び・教育内容と大学名(家政)が与えるイメージの不一致に悩みながら,高校進路室訪問を繰り返し行っていたが,先生方との会話の中でつかんだことは「高校には大学の情報が少なく教育情報がほしい」「進路指導上はイメージや入試情報だけでなく具体的な教育内容や卒業生の活躍状況が必要」とのご意見であった。

 れらのことが「高校現場のご意見を入れながら中味のある冊子をつくろう」「文字を読むことが好きな人に読んでもらえる冊子にしたい」との思いを込めて改訂し,学生や卒業生数百名の生の声が盛り込まれた厚い冊子となった経緯である。

 報業者からは『こんなに文字の多い分厚い冊子を高校生は読まない,広報誌としては不適当…』などの意見が多く,作成開始時も今もかなりの酷評であるが,受験生はとてもよく読んでいる。

 校の教育現場からも,また教育評価機関や大学ランキング,高校生が選ぶベストパンフレットでも「多様な視点で読むことができ,内容があって理解しやすい,将来がイメージしやすい」などの高い評価を得ている。

 験勉強で辛くなったとき,家政大の案内冊子の中から自分の好きな先輩の生き方や受験勉強の方法を何度も読んで頑張りました…と入学後に伝えに来てくれた学生もいる。

 みがいのある大学案内冊子の原点は高校からの声であったが,十数年前からの入試業務に加え,学生の就職も担当するようになって,読む力や基礎学力の不十分さも感じている。文系だけでなく理系の学生であっても理系科目を学ぶために必要とされる論理的思考力を養う基礎としても,国語力・読むことの必要性を強く感じており,本年よりこれらの力をつけるための支援を新たに開始した。

 京家政大学では「ワンストップサービス」を目的に,入り口(入試)から出口(就職)を担当する進路支援センターと教育・学生生活を担当する教育・学生支援センターの二部体制で学生にかかわるサポートを強化している。これからも教育を支える部署として学生に真に役立つ支援・指導に努めていきたい。

目 次

第93号平成23年1月1日