平成25年9月1日
今、求められている保育実践力の養成
共立女子大学准教授 小原 敏郎この著者の書いた書籍
最近の幼児教育・保育を取り巻く国の動向に注目すると,平成24年8月に「子ども・子育て関連三法案」が国会にて可決し,これからのわが国としての保育のあり方が示された。また,認定こども園法の改正により新たな「幼保連携型認定こども園」が創設される。日本の幼児教育・保育は,大きな岐路に立っているといえる。筆者は,このような変革の時代だからこそ,子どもたちの健やかな成長・発達を支えていける保育者の保育実践力がますます求められていると考えている。
では,今の時代に求められる保育実践力とはどのような専門性であろうか。今回,幼児教育・保育の研究者の先生方と共に執筆した『保育・教職実践演習―保育者に求められる保育実践力―』では,保育実践力を単に“○○ができる”といった能力やスキルとして単純にとらえていない。さまざまに変化する状況を多面的にとらえ,計画―実践―ふりかえりといった保育のプロセスの中で,常に自分の知識や技術を再構成することができる力としてとらえている。
ここで課題となるのは,いかにこのような保育実践力を養成するかである。まさに言うは易く行うは難しといった具合である。従来から指摘されていることかもしれないが,筆者は,キーポイントとして“学びのふりかえり”と“学びの連続性”に着目している。それぞれを説明すると,“学びのふりかえり”とは,自らがそれまでの学びを見直し,学んでいることを意識化し,確認していくプロセスととらえられる。
養成教育においては,これまでも実習後のふりかえりの重要性などが指摘されてきた。ただ,ふりかえること自体が目的となったり,時間的な余裕のなさから,学生が何を学んだかを意識化し,次の学びにつなげることが難しい場合もあったように思う。今後,ますます複雑化している保育状況に対応するためには,一人ひとりの学生が“授業ではこのようなことを学べた”“このことが自分の課題や強みだとわかる”,ふりかえりを積極的に行っていくことが求められると考えている。
“学びの連続性”に関しては,連続性を2つの側面からとらえたい。養成と現職とのつながりとしてのいわゆる“縦の連続性”と,自分と子ども・親とのつながり,といったいわゆる“横の連続性”である。すなわち,縦・横のつながりを思い浮かべながら今の学びを深めていくということが求められる。養成段階から保育は一人でできるものではなく,連携や協同を意識できるような学びの展開が必要と考えている。
最後に筆者が専門委員として参加させていただいた全国保育士養成協議会の全国調査(平成21年1月実施,全国約6,500名の保育者が回答)の結果を紹介したい。保育者に仕事のやりがいを問うたところ,やりがいを“よく感じる”“時々感じる”を合わせると約95%であった。このように多くの保育者が仕事にやりがいを感じていることは,非常に心強く感じる。今後も保育にやりがいをもち,子どもたちの幸せを実現できる実践力をもった保育者を養成することに微力ながら努力したい。
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