平成30年1月1日
保育士養成課程等の見直しについて
日本保育者養成教育学会会長 厚生労働省保育士養成課程等検討会副座長 東京都市大学名誉教授 小川 清美この著者の書いた書籍
昨年3月に約10年ぶりに保育所保育指針が改定されたのを受け,保育士養成課程等の検討が行われた。私は40年にわたり養成校で保育者養成を行い,多くの卒業生を世に出した。保育者として仕事を継続している人も多い。現在,大都市の保育所不足,ひいては保育士不足を解消するために保育士養成校は増加している。保育者養成教育確立の必要性から,一般社団法人全国保育士養成協議会の個人研究の部分を独立させ,平成27年3月に学会を立ち上げた。その後厚生労働省の検討会のメンバーとなった。日本の今後の保育士養成について考える機会を与えられたのである。
保育所保育指針改定の根拠は,以下のことである。
近年,子育てをめぐる地域や家庭の状況が変化し,核家族化の進展や地域のつながりの希薄化から,日々の子育てに対する助言,支援や協力を得ることが困難な状況になっており,就労の有無や状況にかかわらず,子育ての負担や不安,孤立感が高まり,児童虐待の発生も増加し,大きな社会問題になっている。
そこで今改定では,年齢層ごとの保育のねらい及び内容の明確化,幼児教育の積極的な位置づけ,養護に関する基本的事項の明記,職員の資質・専門性の向上等が盛り込まれた。
さらに平成29年度から,一定の技能・経験がある保育士等について相応の改善を行う保育所等でのキャリアアップの仕組みを構築し,「保育士等キャリアアップ研修ガイドライン」が作成され,各都道府県等で研修が開始された。
こうした状況を踏まえて,今後の保育士に必要な専門的知識・技術を念頭に置き,保育士養成課程を構成する教科目の見直しの検討とともに,それに伴う保育士試験に係る試験科目等の見直しも検討された。保育を取り巻く情勢変化を踏まえた,より実践力のある保育士養成に向け,六つの観点から関連する教科目の名称や教授内容等について検討し,具体的な見直しの方向性を示した。①乳児(三歳未満児)保育の充実,②幼児教育を行う施設としての保育の実践,③「養護」の視点を踏まえた実践力向上,④子どもの育ちや家庭支援の充実,⑤社会的養護や障害児保育の実践,⑥保育者としての資質・専門性の向上。
なお,各養成校の創意工夫で,養成課程を構成する科目全体の体系・構造化を明確にすること,0~18歳未満の子どもや保護者等への支援の実践ができること,ただし現行の総履修68単位は維持し,修得すべき内容が過度にならないよう配慮することに留意した(具体的な科目名やシラバスは平成29年12月末公表)。
養成校の教職員が一丸となり,同じ目標をもち,質の高い保育の実践力のある保育士養成へと進んでいくことが肝要である。
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