平成30年1月1日
ますます重要となる在宅管理栄養士
広島国際大学教授 逸見 幾代この著者の書いた書籍
地域包括ケアシステムが重視される中,在宅での栄養管理を担う管理栄養士の役割が大切になってきた。
本来,在宅の栄養管理の目的は「健康維持・予防」と「疾病治療回復・リハビリ・再発予防」の二つに分けられる。その目的に向かい管理栄養士には,在宅療養者への支援,地域でのチーム医療活動への参画・実践が求められ,医療・ケア施設と同等レベルの栄養ケアマネジメントを実施していくことが必要視される。栄養マネジメントシステムの流れの手順に沿って「介入手段と方法の検討,介入是非の判断,他職種の専門性の認識・確認,連携一体化」を実施前に行い,在宅療養者への栄養改善とQOLの向上につなげられるのかを模索しつつも実践していくことが大切になる。
地域における在宅管理栄養士の役割は,在宅の場を見据え,地域の高齢者ニーズに対応できるよう,医師・介護福祉士などとの連携の一端を担い,これらの橋渡し,つなぎを行い支援の実践に役立てていくことである。その際,食生活を支援する手段の一つとして,配食サービスを積極的・効率的に取り入れ,地域高齢者等が医療・介護関連施設以外でも健康で,適切な栄養状態を保てるように,生物的・有機的な「食べる楽しみ」をも得られるような「地域一体型NST活動」を試行錯誤しながら育み,食環境整備を図ることも在宅管理栄養士の役割であろう。
在宅栄養管理への配食サービスの取り組みとしては,事業者向けのガイドラインが作成され,2017年度から配食の普及が図られる旨の検討会(厚生労働省)が設置され,取り組み方も示されている。
低栄養状態を予防・改善し,適切な栄養状態を確保できるよう在宅・施設・配食サービス企業などの各種の管理栄養士間で情報交換を行い連携ができるようにすること,また栄養士が核となり,住み慣れた地域で食環境改善を進める健康的社会環境づくりをしていくことも必要だろう。
このような在宅栄養管理の実践者となる管理栄養士・栄養士を少子高齢化の中で広げていくためには,新世代の「実践者養成」を積極的に進めていくことが急務となる。
現在,日本在宅栄養管理学会と日本栄養士会との共同で「在宅栄養専門管理栄養士」の認定制度ができ,「在宅訪問管理栄養士」の養成認定をしている。しかし認定者は,少数というのが現状である。
これを担う管理栄養士・栄養士は,誰しも最初は新人栄養士である。一朝一夕にはいかないが,まずは,管理栄養士・栄養士の養成課程の科目群を満遍なく修得することで「基礎固め」をして「栄養士力」を養っておくことが大切になる。同時に,栄養士たる自覚とセルフエフィカシーが高まる。
プラスして「実践経験」でさらなる知識・技術が上積みされると,「在宅栄養管理の土俵」が構築されるものと考える。さらに「人間力・体力・精神力・コミュニケーション力」なども磨かれることで「パワーアップされた在宅栄養管理実践者」に育っていくものと期待している。
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