建帛社だより「土筆」

令和元年9月1日

大学の授業改革

東京家政大学准教授 阿部 藤子この著者の書いた書籍

 学の授業改革が叫ばれるようになって久しい。東京家政大学では近年,授業改善のための委員会が発足し,教員の研修を活発に行うと同時に,大学の特色や独自性を生かした教育課程を模索してきた。約2年間の準備を経て,今年度から自校教育科目「スタートアップセミナー自主自律」を開設した。これは家政学部と人文学部の初年次必修科目である。学生側の主体的で対話的な学びを保障するとともに,教員側にも授業改善を促すことを目的としている。ここでその概要を紹介する。

 学の建学の精神は「自主自律」である。本科目は,学生が本学の歴史を知り,本学で学ぶことに喜びと誇りをもてること,他者と協同する力をつけ主体的に学び続ける心構えや自覚を築き「自主自律」の生き方に向けて一歩を踏み出すことを目的としている。

 学修の内容は、大きく2つ,「東京家政大学の歴史から学ぶ」と「社会に向き合うプロジェクト」がある。前者は本学の歴史と建学の精神を知り,自分の今後の学びの目標・姿勢を自覚すること,後者は女性の活躍を阻む要因や背景を知り,その解決に向けて考えを深めて解決策を提案することである。

 また本科目の特徴として,多様な学科の学生で構成される5名グループによる協同学習を基本とすることがまずあげられる。2学部9学科の学生が混在する約40名で編成される。その40名を5名×8グループで構成し,毎時間の授業を行っている。

 修方法としては,傾聴する・読む・書く・調べる・発言することを重視し,ほとんどの活動をグループ内での学び合いで行う。毎回の授業課題は教員から示すが,あらかじめ出された課題に取り組んだ(資料を読み、調べて情報を得るなど)うえで授業に臨む。

 業中は班内での情報交換,議論,各自の学びを記述する時間に充てている。ラウンドロビンやジグソー法などの協同的な学びのスタイルを導入している。各クラスに1名の上級生のスチューデントアシスタント(SA)を配置して,受講生のフォローを担当してもらっている。

 員から資料提示をする,またはコメントすることはあるが,何かを教えるという場面はほとんどない。それでも,学生にとっては,自分の大学について知ること,4年間でどう学んでいきたいか,卒業後の自分がどうありたいかをじっくり考える時間になっているようである。

 業中の記述や授業後のweb上での書き込みを確認しながら,各学生の学びのプロセスを丁寧に見とるようにしている。32あるクラスの担当も,それぞれの学科に所属している教員である。全14回の授業の間に検討会を何度か設け,さらなる改善に向かっているところである。

目 次

第110号令和元年9月1日

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