令和3年1月1日
「食品衛生の一般原則およびHACCP付属文書」改訂を受けて
山口大学教授 豊福 肇この著者の書いた書籍
2019年11月の第51回コーデックス食品衛生部会(CCFH)において,「食品衛生の一般原則(CAC/RCP 1―1969・GPFH)及びHACCP付属文書」(GPFH&HACCP)の改訂作業が完了し,2020年9月からオンラインで開催された第43回コーデックス総会にて最終採択された。
GPFHはコーデックスの種々の衛生規範の大元になるGood Hygienic Prac-ticeであり,日本の管理運営基準を含め,世界中の食品衛生の規則等の基になっている。またHACCP付属文書は,7原則12手順が示され,HACCPシステム構築のためのガイドラインとして,世界中の行政機関および食品事業者で活用されている。GPFHの大幅な修正から50年,HACCP付属文書の最終改訂から16年が経過したことから,2016年初旬より電子的作業部会において改訂作業が開始された。
新文書では,イントロダクションと共通部分に続き第1章としてGHP(一般衛生管理),第2章としてHACCPシステムおよびその適用のためのガイドラインが続く構造となり,共通部分には一般原則の記述が新設された。
変更点は多岐にわたるが,共通部分における「すべての食品事業者(FBOs)は製造・加工・販売する食品に影響するハザードを認識する必要があり,FBOsはハザードの消費者の健康への影響を理解したうえで,それを適切に管理すべきである」とした一節は,今回の改訂における重要な概念といえる。そのほかの主な変更点として,GHPの「操作のコントロール」に製品およびプロセスの記述,モニタリングおよび改善措置,アレルゲン管理等々が追加されたこともあげられよう。
HACCPの7原則12手順に大幅な変更はないが,GHPと重要管理点(CCP)の関係性が明確になり,ハザード分析の重要性および,ハザード分析では「重要なハザードを特定すること」が強調された。原則3は「妥当性確認されたCLの設定」とタイトルが変更され,また,原則6も「HACCPプランの妥当性確認,それに続く,HACCPシステムが意図したとおりに機能していることを確認するための検証手順の確立」に変更されるとともに,妥当性確認と検証のサブセクションが設けられている。
今回の改訂にあたっては日本のHACCP制度化の議論を踏まえ,できるだけ日本の制度化との整合性を図るよう日本代表団からコメントを提出した。そのため,日本の食品事業者が新たに対応しなければならないような大きな変更はない。強いていえば,GHPとHACCPの関係性が整理されたこと,重要なハザードの管理措置であるもののCCPとして連続的なモニタリングが適さない管理措置として「より注意が必要なGHP」という概念が導入されたこと(ISO 22000:2018のOPRPに似ている),食品安全へのマネジメントコミットメントとしてマネジメントの部分が最小限ではあるが含められ,「食品安全文化」の概念が導入されたことに注意が必要であろう。
新しいGPFH&HACCPは第51回CCFHの報告書のAppendix IVにて確認できる。
目 次
第113号令和3年1月1日
発行一覧
- 第121号令和7年1月1日
- 第120号令和6年9月1日
- 第119号令和6年1月1日
- 第118号令和5年9月1日
- 第117号令和5年1月1日
- 第116号令和4年9月1日
- 第115号令和4年1月1日
- 第114号令和3年9月1日
さらに過去の号を見る
- 第113号令和3年1月1日
- 第112号令和2年9月1日
- 第111号令和2年1月1日
- 第110号令和元年9月1日
- 第109号平成31年1月1日
- 第108号平成30年9月1日
- 第107号平成30年1月1日
- 第106号平成29年9月1日
- 第105号平成29年1月1日
- 第104号平成28年9月1日
- 第103号平成28年1月1日
- 第102号平成27年9月1日
- 第101号平成27年1月1日
- 第100号平成26年9月1日
- 第99号平成26年1月1日
- 第98号平成25年9月1日
- 第97号平成25年1月1日
- 第96号平成24年9月1日
- 第95号平成24年1月1日
- 第94号平成23年9月1日
- 第93号平成23年1月1日
- 第92号平成22年9月1日
- 第91号平成22年1月1日
- 第91号平成21年9月1日
- 第90号平成21年1月1日
- 第89号平成20年9月1日
- 第88号平成20年1月1日