建帛社だより「土筆」

令和3年1月1日

第22回国際栄養学会議の開催にあたって

(公社)日本栄養・食糧学会会長 第22回国際栄養学会議組織委員長 東京大学大学院特任教授 加藤久典この著者の書いた書籍

 本栄養・食糧学会では,10年あまり前から国際活動の一層の強化を図ってきました。そのランドマークのひとつとして,2015年にパシフィコ横浜で開催し,大きな成功を収めた第15回アジア栄養学会議(組織委員長 宮澤陽夫東北大学大学院教授)があります。その準備の真っ只中に,2021年の国際栄養学会議(ICN)の誘致の話が持ち上がりました。2012年からの1年間に及ぶ誘致活動を経て,最後は第19回ICN会期中の総会における投票で日本での開催が決まりました。

 ICNの母体団体である国際栄養学連合(IUNS)は、1946年の設立で現在84の国や地域と18の関連団体が参画しています。IUNSは国際学術会議(ISC)の加盟団体でもあり、日本は日本学術会議を通じてIUNSに所属していて,日本学術会議のIUNS分科会が対応窓口となっています。IUNSが開催する4年に一度の学術集会がICNですが,前回日本で開催されたのは1975年で,故満田久輝先生が組織委員長を務められました。今回は2回目の日本開催となります。

 22回ICN(正しくはIUNS―ICN)は,日本栄養・食糧学会と日本栄養改善学会がお互いの強みを生かしながら共同で主催することとして準備をしてきました。日本学術会議の共同主催も予定しています。4,000から5,000名の参加者を見込んで,東京国際フォーラム(有楽町)を会場に選びました。会期は2021年9月14日(火)から19日(日)の6日間としました。オープニングレクチャーや基調講演などが4題,特別講演が32題,シンポジウムが103セッション(国内外の様々な学会等の企画によるもの45セッションを含む)企画されています。2020年10月からは,すでに一般演題の登録も始まっています。さらにスポンサードシンポジウムや展示も含めて多くの企業様にスポンサーとしてご協力をいただいているところです。詳しくはウェブサイトICN2021をご覧下さい。

 て,ここまでは新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の状況にかかわらず,粛々と準備を進めてきた内容になります。本稿を執筆している2020年12二月上旬の段階では,残念ながらICN開催予定時あるいは一般演題登録締め切り時における同感染症の状況がどのようになっているか,全くと言っていいほど不透明です。IUNS本部と何度も打ち合わせを繰り返し,昨年12月初めに,以下の決定をしました。まず,予定されていた会期での全面対面での開催は不可能であると判断しました。そして,2022年12月6日(火)から11日(日)の日程で,東京国際フォーラムを予約し直しております。

 020年5月に当会の会長に就任してから,私はオンラインあるいはバーチャルな環境での学術集会の可能性を追求することを自身に課してきました。学会執行部にも,積極的に取り組んでいただいています。やはり新型コロナウイルス感染症の影響で現地開催を中止した昨年5月の第74回日本栄養・食糧学会大会(仙台市)の一部の代替となるようなオンライン会議を,9月20日に開催し,活発な質疑も含めて確かな手ごたえを得ることができました。ICNに関しても,工夫次第ではオンラインでもかなり満足度の高い会議を開催できるのではないかと考えていました。

 方で,オンライン開催の学会が一般的になっている状況において,対面での学術集会への渇望が研究者の中で膨らんでいることも実感しています。IUNSの本部からもオンサイトでの開催を望む声が出ていることは確かです。状況が許せば,すべて対面でのICNを開催したいと考え,2年と3か月の延期に踏み切りました。

 020年に予定されていた東京オリンピック・パラリンピックの延期に伴い,同年の東京栄養サミットも2021年に延期されました。これらの開催についても現時点では不確定となっています。ただし,ICNの1年前に東京栄養サミットが開催されるというのは,栄養の力について,国内での関心あるいは海外から日本への注目をさらに増すチャンスです。東京栄養サミットとICNのコラボレーションも検討してきました。第22回ICNの全体テーマは「栄養の力:百億人の笑顔のために」です。多くの皆さまのご参加をお待ちしています。

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第113号令和3年1月1日

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