建帛社だより「土筆」

令和3年1月1日

社会福祉協議会の変わらぬ役割とニーズへの柔軟な対応

北海道社会福祉協議会副局長  中村健治この著者の書いた書籍

 「社会福祉協議会(以下,社協)は何をしている組織なの?」と聞かれることがあります。社協は,社会福祉法に「地域福祉の推進を図ること」を目的とした組織と明記されており,社会福祉・地域福祉にかかわる個人・団体等の参加を得て「地域の福祉課題・生活課題の解決に取り組み,誰もが安心して住み慣れた地域で暮らすことができる地域福祉の実現」を目指している組織です。

 体的には,●住民参加による地域福祉の推進や福祉のまちづくり,●ボランティア・市民活動の推進などをベースにしながら,住民に身近な小地域単位での助け合いネットワークの構築,●地域の福祉サービス利用者支援,●生活に困窮する世帯等に対する生活福祉資金の相談・貸付業務,●介護保険法,障害者総合支援法等に基づく福祉サービスの実施など,地域ニーズを踏まえ柔軟な事業展開を行っています。しかしそれゆえ,画一的でない社協活動のわかりづらさがあるのかもしれません。

 うした様々な社協活動のうち,近年クローズアップされてきているのは,災害時における取り組みではないでしょうか。被災者の緊急的な生活支援として,生活福祉資金の特例貸付などの相談・貸付を行うほか,災害ボランティア拠点の設置も行います。厚生労働省の防災業務計画において「被災都道府県・市町村,社会福祉協議会,全国社会福祉協議会,日本赤十字社等は,速やかに現地本部及び救援本部を設置し,行政機関等関係団体との連携を密にしながら,ボランティアによる支援体制を確立する」と明記されているように,災害時に現地本部を設置し,ボランティアの需給調整,ボランティア活動の推進など,行政と連携し,復旧・復興に合わせた取り組みを行っています。

 お,東日本大震災における被災地のボランティアの確保においても,内閣官房長官から企業・団体に対してボランティアの要請を行い,その文書の中で,各市町村社協,NPO・NGO等がボランティアの希望者受付を行っていると明記されており,社協等における災害ボランティアセンターをボランティア活動の拠点としました。

 近の動きでは,このたびのコロナ禍への対応があげられます。新型コロナウイルス感染症の影響を受け,休業や失業等により収入が減少し,緊急かつ一時的な生計費を必要とする世帯に対する特例貸付窓口を住民の身近な市町村社協等で開き,生活の不安に対する迅速な緊急対応を実施しています。

 域における福祉・生活ニーズは,その多様化・複雑化に伴い,特定の組織・機関だけで支援・解決できるものではなくなってきたため,国においても「地域共生社会の実現」に向け舵を切っています。社協は,全国どこのまちにも設置され,住民主体の原則をもち,住民に寄り添った活動を実施するという,これまでも,これからも変わらぬ役割を担っています。その変わらぬ役割を果たすため,その時々の社会の要請,住民のニーズに応える柔軟な展開が,社協には今後一層求められてくると感じています。

目 次

第113号令和3年1月1日

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