令和3年9月1日
日本食品標準成分表2020年版(八訂)の活用
学校法人食糧学院東京栄養食糧専門学校校長 渡邊智子この著者の書いた書籍
「日本食品標準成分表」(以下,成分表)は,日本人にとって食べ物を評価する基準として「物差し(秤)」の役割をしている。成分表は,1950年に初めて公表されて以降,科学の進歩や社会情勢の変化に伴い,収載食品の増加,変更,細分化などが行われるとともに,必要に応じてエネルギーや収載成分の分析方法,効力値の計算方法などが見直されてきた。
そのため,成分表は最新版を使うのが原則である。
ある食事の栄養計算結果は,根拠となる成分表が異なれば異なる値(エネルギーや全部あるいはいくつかの成分)となるが,その時点で最新版の成分表を用いた結果が,最も確からしい値といえる。また,他の食事や食品の栄養計算結果を比較する場合もあるため,栄養計算結果を示す際には,根拠として成分表の正式名称を記載する必要がある。
現在の最新版は,2020年12月に文部科学省より公表された「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」(以下,成分表2020)である(文部科学省ホームページより成分表全文および正誤表を入手できる)。
成分表2020の改定のポイントは,①調理済み食品の情報の充実,②エネルギー計算方法の変更,③組成成分表の充実,④「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」(以下,成分表2015)の追補成分表(2016~2019)の反映(収載食品数の増加,既収載の菓子類,加工食品の収載値に原材料的食品の成分値の変更を反映,成分の追加:ナイアシン当量と難消化性オリゴ糖等を含む食物繊維),⑤解説の充実(食品群別留意点,調理に関する解説など),⑥表頭項目の変更である。
特に,②エネルギー計算方法の変更は,各食品のエネルギー量に大きな変化(成分表2015のエネルギー量の計算方法で算出したエネルギー値に比べ平均で約9%減)を及ぼしている。
これは,成分表2020でのエネルギー産生成分の変更(原則として組成成分から算出した成分を用いる)およびエネルギー換算係数の変更(全食品のエネルギー換算係数を統一)によるものである。
成分表2020を使ってこれまで提供していた食事のエネルギー量を再計算すると,前述のように以前の値よりも低くなる。これは,食事を評価する「物差し(秤)」が変わったためであり,今まで以上に確からしいエネルギー量を示しているといえる。また,これまで特定給食施設等で提供する食事の基準が高く見積もられていた可能性を示唆するとも考えられる。
新しいエネルギー値を用いた栄養計算では,このエネルギー量の算出に用いたエネルギー産生成分を,摂取量およびエネルギー産生栄養素比率の計算に使用する(詳細は,建帛社のホームページに示しているので参照されたい)。
成分表2020の最も重要な変更点であるエネルギー計算の変更は,栄養士・管理栄養士に限らず,食にかかわる全ての職種に周知し,理解いただきたい。また,栄養士・管理栄養士養成施設の全教員の共通理解と学生への教育以外にも,それらの全職種の養成施設での教育も必要である。
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