管理栄養士が臨床栄養の現場で活躍する傾向が強まる中で,必要な医学的知識を網羅する一冊。現役医師を中心に最新知見を踏まえ詳述する。
内容紹介
まえがき
はじめに
本書は2003 年9 月に初版発行され,第3 版まで刊行された『臨床医学概論』を改題し,基本的には同じ構成ながら,執筆陣が大幅に変わった『臨床医学入門』として新たに出版されたものである。
この十数年間にわが国の医療を巡る状況は,さらに進展する少子高齢化と,それに関連する医療費負担の増大に対処するための保健医療行政施策のもとに,大きな転換を遂げつつあるのは衆目の一致するところであろう。とくに,医療と介護における合理化,効率化は差し迫った大きな課題といえる。
このような課題は,いうまでもなく医師のみに課せられているものではない。すでにNST にみられてきたようなチーム医療では,管理栄養士を含むコ・メディカルの積極的な参加のもとに,情報を共有する包括的医療態勢で取り組んできた経緯がある。チームのなかでは当然ながら各プロフェッショナル固有の専門的機能を果たすと同時に,医療の全体像を把握する機能が求められるのである。そのために,例えばわが国ではどちらかというと食の専門家として一般に受け止められていた管理栄養士に対して,その臨床医療リテラシーを高めることが必須の前提となるのである。
管理栄養士制度の先進国である米国や英国においては,管理栄養士の主たる業務の場が病院となっている現実がある。わが国でも管理栄養士が臨床栄養の現場で活躍する傾向が強まっているように見受けられ,個別化した栄養指導の実力を高める場としても,臨床栄養に期待する向きが大きくなってきたようである。確かに,近年重要視されてきた術後の回復期やリハビリテーションでの栄養指導の役割,さらにこれからの課題である健康体力,とくに免疫機能における栄養・食事の重要性などに目を向けるとき,上述の臨床栄養にかかわるリテラシーレベルの向上の重要性については論を俟たないところであろう。本書がその役割を果たすことを心から願っている次第である。
最後に,ご多忙の中本書の執筆陣に加わってくださった広範な分野の先生方,さらに多岐にわたる多数の執筆者の調整やとりまとめに尽くされた諸先生,そして編集に当たられた建帛社のスタッフ各位に厚く御礼申し上げます。
2020 年4 月
福 井 次 矢
小 林 修 平
初版まえがき
2003 年8 月7 日,厚生労働省は新しい全国調査の結果として,わが国の糖尿病罹患者と「予備軍」が成人6 人に1 人という高率に達したと発表した。これは5 年前の初調査に比べても,計250 万人の増加ということになる。過去の結核に代わる,21 世紀の新たな国民病といわれるゆえんであろう。高齢化,国民医療費の高騰など,わが国の医療・保健が抱える課題に加え,更なる大きな問題が,われわれ専門家に突きつけられたというべきである。
この糖尿病をはじめとする生活習慣病の主たる特徴の一つは,その発症背景が多面的であるということである。当然ながら,その予防はもとより,治療も多面的となる。すなわち,多くの専門分野の協力体制が不可欠ということになる。医師のみでなく,いわゆるコメディカル各職種の専門家が加わった,有機的連携で対応の有効化を図らねばならないのである。そのためにはこれらのコメディカルの,基礎的医学知識のみでなく,疾病対応の臨床の諸側面についての知識を深める必要があるのは論をまたないところであろう。
おりしも管理栄養士の養成カリキュラムにかかわる大幅な見直しが,栄養士法の改定,健康増進法の制定などとあいまって,生活習慣病対応を志向したかたちでなされた。その基本的方向の一つとして,疾病ならびにそれをめぐる諸問題へのより深い理解が求められる点があげられる。ちなみに上記糖尿病対策においては,食生活の改善は不可欠であるばかりでなく,最優先課題ともいえる。本書はそのような状況に対応するものとして企画されたものである。どの程度の知識を盛り込むべきか,そのような意図での初めての試みとして,検討のために多くの時間をかけた経緯があり,多くの関係者に少なからぬご心労をかけたが,単なる知識にとどまらず,保健・医療の心を共有することも願った独自の特色をもつテキストとなった。多くの苦労を支えてくださった執筆者の諸先生方,ならびに忍耐強くお世話いただいた(株)建帛社の筑紫社長および編集スタッフの各位に厚く御礼申し上げる次第である。
2003 年8 月
福 井 次 矢
小 林 修 平
目 次
第1章 病気とは
1.“健康”と“病気”
2.現在われわれが直面している病期
3.医学の歴史概観
第2章 医療の考え方
1.医療の使命(職業倫理)
2.診断の進め方
3.治療法の種類と特徴
4.根拠に基づいた医療(EBM)と診療ガイドライン
5.チーム医療
第3章 病気の原因と成立のメカニズム
Ⅰ 病気の原因
1.外 因
2.内 因
Ⅱ 病気の成立のメカニズム
1.退行性病変と代謝異常症
2.進行性病変
3.循環障害
4.炎 症
5.免 疫
6.腫 瘍
Ⅲ 疾病検出のための検査の基本的な考え方
1.基本的考え方
2.検体検査
3.心電図
4.超音波診断
5.画像診断
Ⅳ 生活習慣と疾病
1.生活習慣と健康の関係
2.生活習慣病とその特性
3.諸生活習慣因子の特性と改善の原則
4.生活習慣病をめぐる新たな流れ
Ⅴ 疾病と体質論―病気にならないからだづくりとは―
1.体質と何か
2.統合医学的視点の重要性
第4章 主要な疾患
Ⅰ 消化器系疾患
Ⅱ 循環器系疾患
Ⅲ 呼吸器系疾患
Ⅳ 腎・尿路疾患
Ⅴ 血液疾患
Ⅵ 内分泌・代謝性疾患
Ⅶ アレルギー・膠原病
Ⅷ 感染症
Ⅸ 精神・神経系疾患
Ⅹ 生殖器系疾患
Ⅺ 運動器(筋・骨格)系疾患
Ⅻ 眼科疾患
第5章 医療の現状と今後の課題
Ⅰ 医療の現状
1.医療関連感染
2.新興・再興感染症
3.補完代替医療(CAM)と統合医療
4.高齢者医療
5.女性医療
Ⅱ 医療における今後の課題
1.薬をめぐる動向
2.治験コーディネーター(CRC)
3.社会格差と医療
4.再生医療
5.ICTと医療
この本をみた方に
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