日本人の食事摂取基準(2020年版)等に準拠して改訂。PDCAのマネジメントサイクルに則って成果を出す栄養教育の実施を目指す。
内容紹介
まえがき
ま え が き
ヒトは,母親の胎内に宿り,生後いくつかのライフステージを経て,最後には死を迎えることとなる。この間,必要なエネルギー,栄養素等を補給していくが,それが適切に維持されていけば,健全な発育・成長,健康増進,疾病の予防につながる。ところが,近年,農業生産の拡大,食品加工技術や外食産業の発達,高度な情報化社会,人間の価値観の多様化など種々の要因により,適正な食生活を営むことがむずかしくなり,その影響は,胎児から高齢者まで,あらゆる人々に及んでいる。そのため,私たち管理栄養士は,人々が健康で幸福な人生を送れるように,効果的な栄養教育・栄養カウンセリングを実施して,食生活の面から支援することが求められている。さらに,高齢社会,生活習慣病の増加は,さまざまな病態や生理学的機能の変化に伴う食事摂取能力の低下をもたらし,これらの状況の人々に対する栄養教育も重要な課題となっている。
一方,健康格差が社会的問題として取り上げられ,社会・経済的状況が栄養状態へ影響を及ぼしていることも指摘されるようになった。したがって,これらの状況を踏まえて管理栄養士は,栄養管理・栄養教育の専門職として,各分野でその技術や能力を発揮することが望まれている。
2002(平成14)年の改正栄養士法の施行に伴い,管理栄養士養成施設ではカリキュラムの柱に,「健康の保持増進,疾病の一次,二次,三次予防のための栄養指導を行う能力」の涵養をめざすことが組み込まれた。これをもとに「栄養教育論」の教育目標として,「健康・栄養状態,食行動,食環境等に関する情報の収集・分析,それらを総合的に評価・判定する能力を養う」「対象に応じた栄養教育のプログラムの作成・実施・評価を総合的にマネジメントできるよう健康や生活の質(QOL)の向上につながる主体的な実践力形成の支援に必要な健康・栄養教育の理論と方法を修得する」などがあげられた。その内容について,本講座の『栄養教育論Ⅰ―栄養教育の概念と方法―』として2006(平成18)年に刊行した。また,「ライフステージ,ライフスタイルに応じた栄養教育のあり方,方法について修得する」ことを目的として,『栄養教育論Ⅱ―ライフステージ別・疾病別栄養教育―』を2009(平成21)年に刊行した。
2010(平成22)年には,2002(平成14)年に示された管理栄養士国家試験出題基準が見直され,管理栄養士を取り巻く状況や学術の進歩に合わせた内容へと改正された。そこで,今回,その基準を踏襲し,既刊の2冊をまとめ,「栄養教育論」を系統的に学べるようにし,管理栄養士の実践の場での栄養教育の事例をより充実させた内容とした『栄養教育論』として刊行する運びとなった。すなわち,管理栄養士の携わる栄養教育の意義や基礎理論を十分に理解したうえで,時代の変化に対応した事例をもとに,理論と実践を結びつけながら学べるようにした。本書が,栄養教育の専門職としての技術や能力を培うことに大いに貢献できることを願っている。
2013 年2月
中 村 丁 次
外 山 健 二
笠 原 賀 子
第3版刊行にあたって
2019 年3 月に管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)が改定され,さらに,2020 年4 月より「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」が施行される。
第3 版では,対象者の行動変容を促すために必要な新たなモデルや理論をより充実させ,基本的な事項と実践が結びつくように配慮した。それは,管理栄養士がPDCA のマネジメントサイクルに則って,成果を出す栄養教育が実施できることをめざすためである。
2020 年3月
編 者 識
目 次
第1章 栄養教育の概念
1.栄養教育の概念
2.栄養指導・栄養教育の歴史
3.国民の栄養・食事の現状と課題
第2章 栄養教育のための基礎理論
1.栄養教育による食行動の変容―行動科学理論と栄養教育―
2.行動科学の理論とモデル
3.行動変容技法と概念
4.栄養カウンセリングとコミュニケーション
5.栄養教育の展開―組織・地域づくりへ―
6.食環境づくりにおける栄養教育
第3章 栄養教育とマネジメントシステム
1.栄養教育のマネジメントシステム
2.栄養教育のためのアセスメント
3.栄養教育の目標設定と計画(栄養教育プログラム)
4.栄養教育の具体的方法―学習形態と教材―
5.栄養教育と評価
第4章 ライフステージ・対象者別栄養教育
1.妊娠・授乳期の栄養教育
2.乳・幼児期の栄養教育
3.学童期の栄養教育
4.思春期の栄養教育
5.成人期の栄養教育
6.高齢期の栄養教育
7.内科系疾患を有する者の栄養教育
8.外科系疾患を有する者の栄養教育
9.障がい者の栄養教育
第5章 事例から学ぶ栄養教育の理論と実際
1.医療機関における個人栄養教育
2.経口摂取移行期の栄養教育
3.在宅栄養指導
4.保健センターにおける栄養教育
5.学校における食育の推進
6.事業場(職場)における栄養教育
7.開業栄養士による栄養教育
8.スポーツ分野における栄養教育
9.サプリメントと栄養教育
10.介護保険施設,社会福祉施設(障がい者,児童福祉)における栄養教育
11.ICT(情報通信技術)を用いた栄養教育
第6章 栄養教育の国際的動向
1.諸外国における栄養状況
2.諸外国における健康・栄養教育政策
3.諸外国のフードガイド
この本をみた方に
おすすめの書籍
-
-
pickup
改訂 感染と生体防御
管理栄養士の専門性を高めるハイレベルな教科書の改訂版。栄養・免疫・感染をキーワードとし,「運動と生体防御」等の最新知見も詳説。
-
-
-
pickup
四訂 健康・調理の科学
心とからだの健康にとって食事がいかに重要であるか,調理の科学と健康の科学の接点から「食事」を考える。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」に準拠し,内容を改めた四訂版。
-
-
-
pickup
臨床医学入門
管理栄養士が臨床栄養の現場で活躍する傾向が強まる中で,必要な医学的知識を網羅する一冊。現役医師を中心に最新知見を踏まえ詳述する。
-
-
-
pickup
新版 食品衛生学 第3版
管理栄養士養成課程のための,高い専門性を意識したハイレベルなテキスト。統計情報や規格の記述を改めたほか,食品衛生法の改正や容器包装,HACCPについての最新動向などを加筆し改訂。
-
-
-
pickup
三訂 公衆衛生学 第5版
より専門性の高い公衆衛生テキスト。疫学情報や統計・法令を最新知見に更新した第5版。管理栄養士国家試験ガイドラインの改定にも対応。
-
書籍に関する
感想・お問合わせ
下記フォームに必要事項をご入力いただき、一旦ご確認された上で送信ボタンをクリックしてください。
なお、ご返信さしあげるまでに数日を要する場合がございます。