はじめに

　運動は，健康づくりの３本柱として栄養・休養とともに位置づけられている。

　１９８８年から始まった第２次国民健康づくり対策（アクティブ８０ヘルスプラン）では，「健康づくりのための運動所要量」（１９８９年），「健康づくりのための運動指針」（１９９３年），「健康づくりのための年齢・対象別身体活動指針」（１９９７年）が発表された。続く２０００年から始まった健康日本２１では，「身体活動・運動」が「栄養・食生活」に次いで取り組むべき分野の２番目に配置され，２００６年には，健康づくりのための運動基準２００６，運動指針２００６が策定された。そして２０１３年からは健康日本２１（第二次）が始まり，健康づくりのための身体活動基準２０１３，身体活動指針２０１３が策定された。

　『運動生理学』は，このような社会の流れを背景として１９８７年に栄養士・管理栄養士養成課程の必修教科目として取り入れられ，栄養士法の一部を改正する法律が施行された２００２年以降も，多くの栄養士・管理栄養士養成施設のカリキュラムの中で専門教科目として開設されている。

　『Nブックス運動生理・栄養学』は，次の編集方針のもとに編纂された。

① 栄養士・管理栄養士養成課程の学生が授業で使用することを念頭に置くとともに，体育系や健康科学系の学生も活用できる内容とする。

② 健康・体力づくりのための運動と栄養について，その理論と実際とを記述する。

③ 成人期以降のみを対象とするのではなく，成長期をも重視する。すなわち，運動生理・栄養学の基礎的な理論はもとより，“トレーニングと食生活の実際”をライフステージ別に示したことが，本書の大きな特徴である。

　本書を上梓するにあたっては，できるかぎり平易に記述するよう努めた。したがって，より高度な内容については専門書を参照していただきたい。また，不備な点についてはご批判，ご助言を賜るようお願い申し上げる次第である。

　本書が，健康・体力づくりを目指す方々にとって少しでもお役に立つものとなれば幸いである。

２０１４年１月

髙松　薫

山田哲雄

三訂版刊行にあたって

　２０１３年度から健康日本２１（第二次）が始まり，ライフステージに応じた健康づくりのための身体活動（生活活動・運動）を推進するために，「健康づくりのための身体活動基準２０１３」が策定された。一方，「日本人の食事摂取基準２０１５年版」では，策定目的に生活習慣病の発症予防とともに重症化予防が加わり，エネルギーの指標に体格（BMI）が採用された。このような背景のもと，本書の改訂版が２０１４年３月に，改訂第２版が２０１５年４月に刊行された。

　食事摂取基準についてはその後，健康の保持・増進，生活習慣病の発症予防および重症化予防に加え，高齢者の低栄養予防やフレイル予防も視野に入れて，２０２０年版の策定が行われた。今回，食事摂取基準のほか，国民健康・栄養調査をはじめとする統計資料等の更新への対応を中心に，改訂作業を行った。新しい資料や知見が追加された本書が，読者の皆様のお役に立つものとなれば幸いである。

２０２１年２月

髙松　薫

山田哲雄