食品成分表2020年版(八訂)準拠の改訂版。栄養士・管理栄養士養成課程「食べ物と健康」の調理学分野の教科書。多様な領域で活躍する管理栄養士として,健康増進や疾病予防に貢献するために必要な調理学の知識を,国家試験ガイドラインに沿って学習する。 巻末に演習問題を収載し,学生の理解を深める。
内容紹介
まえがき
まえがき
調理は,狩猟,採取を行い,そのまま食物を食していた長い時代の後,「火を使う」ことを発見して以来の歴史をもつ。
従来の調理学は,『コツ』や『カン』として伝承されてきた伝統的な調理法を,自然科学的に解明することを中心に進んできた。調理中に生じる化学変化について,食品化学的・物理化学的手法により多くの事象が解明され,調理の再現性が高まり,一定レベルの調理は,長年の『修業』を積まなくても可能になった。
2000(平成12)年の栄養士法の改正により,管理栄養士は主として傷病者の栄養指導を行う専門家に位置づけられた。2002(平成14)年に「教育カリキュラム」と「管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)」の改正が行われ,調理学は管理栄養士養成カリキュラムの「専門基礎分野」の中の「食べ物と健康」に分類された。さらに,近年の管理栄養士を取り巻く状況や学術の進歩に合わせ,2010(平成22)年には新たに「管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)」の改定が行われた。これらの制度の特徴は,食品や栄養素を中心に,つまり「物」に重点がおかれていた従来の内容から,生活,環境,心理,コミュニケーションといった「人」に重点をおく内容に移行してきたことである。保健・医療・福祉・教育をはじめとする高度な知識や技術が求められる管理栄養士の資質を担保するための改定であった。
本書は,2010 年に検討され,第26 回国家試験(2012 年3 月)から適用された「管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)」の「食べ物と健康」分野のうち,「調理学」にかかわる大項目「1.人間と食品(食べ物)」,「7.食事設計と栄養・調理」に沿った内容を収載した。巻末には学生の理解を深めるため,演習問題や食事摂取基準を付した。
第1章「人間と食品(食べ物)」では,食品の歴史的変遷と食物連鎖,食文化,食生活,健康,食料,環境問題といった,人間と食べ物のかかわりについて理解を深める。
第2章「食事設計の基礎」では,食事設計に必要な各要素を理解し,経済的,健康的,栄養的配慮とともに,おいしく食べることにつながる嗜好性とその評価法について理解を深める。
第3 章「調理の基本」では,従来からの調理学の主流であった,調理における基本的知識と技能を修得する。まず,調理の意義を理解し,調理操作の原理,効率的な加熱法,調理器具の使用法,調理操作,食品の調理特性について理解を深める。
第4 章「調理操作による食品の組織・物性と栄養成分の変化」では,調理操作を行うことにより変化する食品の栄養学的,機能的特徴について学び理解を深める。
第5 章「献立作成」では,日常的に食べる食事は人びとの健康づくりのために重要であり,その献立作成方法の基礎を修得する。さまざまな食品の特徴を理解し,食事のバランスを考えた献立を作ることが望ましい。また,衛生的に安全であり,栄養面,嗜好面を満たし,さらに,生理的,心理的にも満足できる献立を作成する方法について理解を深める。
現代の調理学は,多様な領域で専門職として期待が高まっている栄養士・管理栄養士の養成に役立ち,健康増進や疾病予防に貢献できる学問分野として,対象領域を広げている。また,調理学は,子どもたちの食育にも大いに関わることから,家庭科教諭や栄養教諭などの教員養成においても十分活用いただけると考える。
本書は,最新の「管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)」に則り,社会の要請にそった,管理栄養士養成における「調理学」に求められる知識を中心に編集を行った。本書
が広く活用されることを願っているが,ご利用いただき,不備な点があれば率直なご意見を賜れば幸いである。
終わりに,本書の出版にあたりご尽力,ご配慮をいただいた建帛社の皆さまに厚く御礼申し上げます。
2013 年8 月
執筆者一同
第4 版にあたって
管理栄養士国家試験には,管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)が設けられているが,関連した法・制度等の改正や社会情勢に速やかに対応するため,概ね4 年に一度改定を行うことが望ましいとされている。2016(平成28)年の本書第3 版発行以降,2019(平成31)年3 月に新たな管理栄養士国家試験出題基準が報告され,また,2019(令和元)年12 月に『日本人の食事摂取基準(2020 年版)』が厚生労働省から,2020(令和2)年12 月には『日本食品標準成分表2020 年版(八訂)』が文部科学省より公表された。それらに沿い,必要な改訂を行った。読者諸賢からのご意見を賜れば幸いである。
2021 年3 月
執筆者一同
目 次
第1章 人間と食品(食べ物)
1 食文化と食生活
2 食生活と健康
3 食料と環境問題
第2章 食事設計の基礎
1 食事設計の意義・内容
2 嗜好性の主観的評価・客観的評価
第3章 調理の基本
1 調理の意義
2 非加熱・加熱調理操作の原理
3 熱の伝わり方と効率的な加熱条件
4 代表的な調理器具の使用法
5 代表的な調理操作
6 食品の特徴に応じた調理の特性
第4章 調理操作と栄養
1 調理操作による食品の組織・物性と栄養成分の変化
2 調理による栄養学的・機能的利点
第5章 献立作成
1 献立作成条件と手順
2 供食,食卓構成,食事環境
3 日本食品標準成分表の理解
演習問題
付録
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