疫学・保健統計,環境衛生学実験,生理学実習を網羅した公衆衛生・健康増進に関する実験・実習書。新たな知見やデータを盛り込んだ新版。
内容紹介
まえがき
ま え が き
本書の初版は2011(平成23)年に発行された(角野猛・須崎尚編著)。おかげさまで多くの大学等でお使いいただき,版を重ねてきたが,内容を改めることなく十年余が経過した。この間,公衆衛生の枠組みや制度に大きな変化はないものの,管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)は改定を重ね,環境に関するあらゆる規格基準も見直されている。また,社会や健康に関する統計も日々更新されており,こうした状況に対応するため,公衆衛生に関する実験・実習に携わる新たな執筆者を迎えつつ,最新の知見を盛り込んだ形で,本書を「新版」として発行することとした。
管理栄養士の国家試験における公衆衛生学関連の出題範囲は,「社会・環境と健康」という領域である。その内訳は,「社会と健康」「環境と健康」「健康,疾病,行動に関わる統計資料」「健康状態・疾病の測定と評価」「生活習慣(ライフスタイル)の現状と対策」「主要疾患の疫学と予防対策」「保健・医療・福祉の制度」までの7つの大項目になっている。なお,同国家試験の「社会・環境と健康」の分野での出題数は,現行ガイドラインでは16題である。
第36回管理栄養士国家試験(令和4年2月27日実施)の「社会・環境と健康」の分野における出題内容は,「減塩教室におけるPDCA」「WHOの社会的決定要因の内容」「水道法に基づく上水道の水質基準」「ある年のA地域とB地域の死亡の状況における両地域の比較」「疫学研究の方法に関する説明と名称の組み合わせ」「スクリーニングテストの陽性反応的中度」「健康づくりのための身体活動基準2013の内容」「喫煙」「がん(悪性新生物)」「循環器疾患」「高齢者の健康および骨・関節疾患」「地域保健」「医療計画」「介護保険制度」「母子保健」「保健統計指標と調査名の組合せ」のそれぞれに関する16問であった。筆者をはじめ多くの方々は,公衆衛生学の講義を進めるにあたり,これらの出題内容を意識して,時には演習的な内容を取り入れて対応しているものの,それには時間数の観点から徹底した教育が困難であると感じているのではないだろうか。
公衆衛生学としての講義科目は,管理栄養士,栄養士養成施設では半期2単位と設定していることが多い。これだけでは,上記の内容を全て網羅して学生に教えることはきわめて難しい。そのため,公衆衛生的な実験,実習を授業科目に取り入れている管理栄養士,栄養士養成施設は多くはない。しかし,公衆衛生を理解させるには,実験,実習が必要という意見が多い。
今般の新版にあたっても従来と同様に,管理栄養士,栄養士養成施設の公衆衛生学担当者の中で,理論とともにそれを実証するための実験・実習科目を必要と認識する者達が集い,空気,温熱,上水道,下水道などや,人口動態における各種統計計算,疫学関連におけるコホート研究,症例対照研究,さらには,スクリーニングにおける特異度の計算などを理解しやすくする参考書の作成に取り組んだ。
管理栄養士,栄養士課程を修了した学生たちの就職方面には多様性があり,管理栄養士,栄養士の職以外に,それらの資格を生かした食品会社の品質管理関連,環境関連企業などの実験に従事するなど,今後もますます広がりをみせようとしている。こうした点をふまえ,本書はそのような職場でも生かせる内容とした。したがって,環境衛生的な実験,生理学的な実験,化学的な分析実験,栄養学的な実験,統計・疫学的な実習など,様々な分野を含んでいるが,それらを平易に解説し,取り組める実験・実習内容とした。なお,一部の実験・実習には高度の技術や高額な機器が必要な場合があるが,本書を活用する担当者のお考えにより,取捨選択していただきたい。
本書は管理栄養士,栄養士などを専攻する栄養系,食品系の学部,学科を対象としているが,看護系,環境系の学部,学科,さらに,衛生検査などの研究者,技術者などにご活用いただければ幸いである。版を改めるにあたっては,内容を精査したが,それでもなお不備な点があれば,ご意見・ご叱正をいただき,今後さらに改めさせていただきたい。
終わりに,本書の刊行にあたってご便宜を頂いた建帛社の各位に対して厚くお礼申し上げる。
2022年4月
編著者 角野 猛・岸本 満
目 次
第1章 保健統計
1 統計の基礎
2 保健統計
第2章 疫学研究
1 疫学とは
2 疫学指標
3 曝露効果の測定
4 疫学の方法
5 スクリーニング
第3章 環境衛生
1 室内環境の測定
2 水質検査
3 産業保健
4 学校環境衛生
5 手指の衛生検査
第4章 身体組成の測定及び生理学実習
1 身体組成の測定
2 疲労測定
3 エネルギー代謝
4 最大酸素摂取量(maximal oxygen uptake:VOgmax)
5 アルコールの生体・社会的影響
6 口腔機能
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