はじめに

　2000（平成12）年，栄養士法の一部が改正され2002（平成14）年４月から新しいカリキュラムに基づいた管理栄養士の養成が開始された。本書はそれに基づき，2003（平成15）年にＮブックスの１冊として菅原龍幸先生の編著で初版を発行した。その際には，食品成分の化学ではなく食品そのものを理解することを目的に，食品のもつ一次機能，二次機能，三次機能に特に注目して執筆した。

　その後，わが国の食料を取り巻く状況は著しく変化している。食習慣の変化，外食・中食への依存度の高まりはもとより，わが国の食料自給率はカロリーベースで39パーセント（2015年度）と先進諸国中で最も低く，多くの食品を諸外国からの輸入に頼っている。その結果，フードマイレージは著しく高く，同時期の米国の約７倍，英国の約２倍である。一方，輸送にかかわる二酸化炭素の排出量などを考慮すれば，地球環境への負荷は大きなものになることから2015年国連総会で17の持続可能な開発目標（SDGs）の基本が採択されるに至った。

　また，ここ数年の，食品の消費と利用にかかわる大きなテーマとして「食品ロス率」の低減がある。この15年ほど一般家庭におけるロス率は４パーセント前後とされているが，宿泊施設・飲食店等での食べ残しや調理過程での廃棄を考慮すれば，これよりもかなり高い割合になるものと推測される。世界規模での将来食料需給見通しは楽観できない状況である。わが国では「飽食の時代」と言われて久しいが，「持続可能な社会」という観点からは，これについても国民一人一人の意識の変革が望まれるところである。

　他方，食物の過剰摂取に起因する生活習慣病罹患者の増加と，それによる国民医療費の高騰も大きな問題である。『日本人の食事摂取基準（2015年版）』では，生活習慣病の重症化予防に配慮した各栄養素の摂取基準値や摂取についての情報が示されている。わが国で常食される食品の栄養素については『日本食品標準成分表』に記載されており，この両者が，わが国において食品や食物摂取について考える際の２大指標といえる。

　今回，新版とするに当たっては『日本食品標準成分表2015年版（七訂）』に基づいて各食品群別の一般成分の平均値・標準偏差を示す表，アミノ酸価等を改め，あわせて三次機能にかかわる記述ほか，解説についても見直しを行った。さらに，巻末には，食品成分表収載値の算出根拠や利用上の留意点を付録として収載した。専門職として，食品そのものについての理解と併せ，食品成分表記載の数値のもつ意味を正しく理解できるようにとの配慮からである。

　本書が，これまで以上に，管理栄養士・栄養士養成教育に寄与できることを願っている。

　　平成28年９月

著者を代表して　田所忠弘

新版第２版の刊行にあたって

　本書は2016（平成28）年に大きく内容を改め，新版を発行したところであるが，2020（令和２）年12月，新たに『日本食品標準成分表2020年版（八訂）』が文部科学省より公表されたことで，これに伴う改訂が必要となった。そこで，本書においては，食品成分値に関する記述を見直し，各種統計データ等も更新する形で，このたび「新版第２版」として発行することとした。

　　令和４年１月

著者を代表して　田所忠弘