はじめに
今日,管理栄養士・栄養士が活躍する場は,医療・保健分野から介護・福祉分野,教育分野へと広域にわたり,そこでは高度な専門的知識と技能が求められ,社会的な役割も大きなものとなってきています。
その中で一定の資質を確保するための管理栄養士国家試験の役割は重要であり,本書はその管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)に沿った教科書として位置づけ,まとめられております。編集作業中,2015年2月に改定ガイドライン(2016年3月の管理栄養士国家試験から適用)が出されたため,内容に再検討を加え,ここに完成いたしました。
本書は,2部構成となっております。第Ⅰ部「臨床栄養の基礎」では,臨床栄養,栄養ケア・マネジメントについての基礎的な事項を解説し,第Ⅱ部の「疾患・病態別の栄養アセスメントと栄養ケア」では,個別の疾患の病態と原因,症状,診断・検査,治療等についてまとめ,それらの疾患・病態や栄養状態,心身機能の特徴に応じた適切な栄養ケア・マネジメント,「日本人の食事摂取基準(2015年版)」に基づいた栄養・食事療法について解説しております。巻末の資料には,英文の略語や主要臨床検査基準値の一覧とともに,各疾患についての代表的な薬剤リストも掲載しました。
また,読者対象が管理栄養士・栄養士養成課程の学生が主であることを念頭に,難解な文章にならないこと,内容の要点を理解しやすくするために図表を多く挿入し,用語解説を「側注」として設けたこと,各章の冒頭には「学習のねらい」を,章末には「学習チェックリスト」を設け,自分で理解度をチェックできるよう配慮したこと,さらに,第Ⅱ部の各疾患の章では,理解度をあげるため冒頭に「基礎知識」として「人体の構造と機能及び疾病の成り立ち」の復習を簡潔に加えるなどの工夫をいたしました。
今般の改定ガイドラインでは,「臨床栄養学」は30問の設問が28問に減少しましたが,代わりに,管理栄養士として栄養管理を実践するうえで必要とされる思考・判断力,基本的な課題に対応する能力を問う「応用力試験」5問の中に複合されて出題されております。本書で学んだ臨床栄養学の知識を「応用力試験」においても活かしていただけるなら幸いです。
学生諸氏が一人でも多く管理栄養士国家試験に合格でき,管理栄養士として高度の知識と技能を身につけ,各職場で活躍することを期待しております。
最後に,各執筆者には,お忙しいところさまざまな編集にあったての要求に対応していただいたことに心より感謝いたします。また,出版にあたり,建帛社編集部の皆様にご助力をいただいたことにも重ねて深謝いたします。
2015年9月
編著者 明渡 陽子
長谷川輝美
山﨑 大治
「第4版」にあたって
初版刊行以来,おかげさまで多くの管理栄養士・栄養士養成課程で教科書としてご使用いただき,今般さらなる増刷の機会を得ることとなりました。第3版刊行後に新たに「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022」,「肥満症診療ガイドライン2022」をはじめとした各疾患ガイドラインが新たに示されいます。また,診療報酬および介護報酬についても管理栄養士に関連した改定が行われています。さらに,2023年2月には管理栄養士国家試験出題基準の一部改定が公表され,2024年2月実施の国家試験から適用されます。それらについて記述を改め,「第4版」として刊行することとします。これまでにも増して,管理栄養士・栄養士を目指す皆さんにご活用いだければ幸甚です。
2023年4月
編著者一同