内容紹介
福祉の理念として理論的に確かな内容を詳細に論じ,具体的な方法論として学生に理解しやすい技術的なアプローチを解説した。さらに具体的な支援のあり方を通じて,ソーシャルワークの根源的なスキルを理解し,実践力を高められるよう展開する。
法令・統計など最新動向に更新した改訂版。
まえがき
はじめに
福祉とは,一人ひとりの人間がその人らしく幸せに暮らしていける社会を築くことと,自分自身を知ることとを同じプロセスの中で促進し,実現させていく実践の科学である。
それは,すべての人を一人の人間として大切にし,優しさと思いやりの心をもちながら,自分自身を肯定する。また,他者を尊重する生き方を育み,その結果,愛を基盤として互いに支えあう態度と行動がとれる専門職の育成を目指す学問である。
従来,日本においては伝統的に,生活と福祉の結びつきの度合いが強かった。もちろん,その伝統が「日本型福祉社会論」に代表されるような,政府による「福祉切り捨て」の口実となり,公的な福祉施策の充実を阻んだ要因となったことも事実である。さらには,近年の児童虐待の増加や,いわゆる「消えた高齢者問題」の顕在化等をみても,これまでとは違い,生活と福祉の結びつきがきわめて希薄なものとなっていることは疑いない。
このような状況の中,専門的な福祉の教育のさらなる充実と人材の確保,いわゆる広義の福祉の担い手である,管理栄養士・栄養士,保育士ならびに看護師等の専門職の職域の拡大等が模索されている。こうした思いから,専門領域で活躍されている諸先生方と本テキストを著した。
本当に必要なことは,より生活に根ざした,福祉の専門教育の充実,さらにいえば,「職業としての福祉」だけではなく,「生活としての福祉」の充実である。今後は福祉の専門教育を通して,あらゆる人びとが「地域の生活者として共に生きていく力を身につけていくこと」を可能にする専門職の養成が求められる。
本テキストでは,福祉の理念として理論的に確かな内容を第2章,第6章,第8章で詳細に論じている。また,具体的な方法論として学生に理解しやすい技術的なアプローチを,第1章から第10章で,各福祉の領域について人びとの生活という視点から解説した。さらに具体的な支援のあり方については,第11章において,人びとの生活の場所として地域を有機的な命をもつものとしてとらえ,さらに第12章においてソーシャルワークの根源的なスキルが読者に理解しやすく実践力が高まることを意識して著している。
本書をテキストとして活用して頂くことにより,社会福祉の領域を学習される皆様の知識や技術が高められ,他者を思いやる福祉の心がより豊かになることを祈念申し上げる。
なお,本書の出版にあたっては,建帛社編集部の方がたに大変お世話になった。執筆者一同感謝している。
2016年1月
編著者 赤木正典
平松正臣
目 次
1 21世紀の福祉の目標
2 現代社会の諸問題と人権思想
3 現代社会と社会福祉の潮流
第2章 社会福祉の基礎理解
1 社会福祉とは―welfareからwellbeing―
2 わが国における社会福祉の概念
3 社会福祉の対象と目標
4 人権尊重に基づく社会福祉教育の必要性
第3章 社会福祉の歴史
1 社会福祉の歴史を学ぶ意義
2 西洋における社会福祉の歴史
3 日本における社会福祉の歴史
4 社会福祉の現代史
第4章 社会福祉の法律と制度
1 社会福祉の法制
2 社会福祉の機関
3 社会福祉の財政
4 社会福祉の従事者
第5章 貧困と社会福祉
1 貧困問題と公的扶助
2 公的扶助の歴史
3 公的扶助対策(生活保護の内容と現状)
4 生活保護の動向と課題
第6章 子どもと家庭の福祉
1 子ども家庭福祉とは
2 現代社会と児童問題
3 子ども家庭福祉対策
4 子ども家庭福祉の実施体制
第7章 高齢者の福祉
1 超高齢社会の到来
2 資料でみる超高齢社会の実態
3 高齢者福祉に関連する制度
4 高齢者福祉の課題
第8章 障がい者の福祉
1 障害者福祉とは
2 障害のある人の生活実態とニーズ
3 障害者福祉の施策
4 障碍者福祉に関する施策の課題
第9章 ひとり親家庭の福祉・女性福祉
1 ひとり親家庭の福祉
2 女性の現状と女性福祉
第10章 社会福祉援助技術
1 「社会」をも対象とする援助
2 社会福祉援助技術を支える基本的な考え方
3 コーディネート技術の重要性
4 過程(プロセス)としての社会福祉援助技術
5 利用者との直接的なかかわりに用いられる技術
6 利用者を取り巻く環境に対して用いられる技術
7 社会福祉援助技術の今後
第11章 地域福祉
1 地域福祉の発展
2 地域福祉の具体的な活度
3 地域福祉計画の策定と住民投票
第12章 医療福祉
1 医療福祉とは
2 医療福祉における福祉諸課題
3 医療ソーシャルワーカーの役割と援助方法
この本をみた方に
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