2021年度より実施の社会福祉士養成課程「社会福祉の原理と政策」のテキスト。最新の法改正に対応し,今後の社会福祉の方向性に言及した。
内容紹介
まえがき
はしがき
今わが国では,社会福祉に対する期待が高まっている。少子高齢化と並行して人口減少が進行する中で,社会福祉の制度利用者や,サービスメニューおよび提供量の整備が図られ,国民生活を支える仕組みが地方を基盤に展開されてきており,今後ますます重要性が高まると思われている。
こうした中で国民はもとより,国民生活を支える多様な関係者において,社会福祉に対する理解が,一層求められるようになってきた。それは,とりもなおさず社会福祉が,国民の生活を基本的に支える社会の仕組みとして定着してきている証左でもある。こうしたことを背景に,社会福祉の人材もかつてとは比べることができないほど各方面から求められるようになってきており,社会福祉人材の養成は喫緊の課題となっている。
しかし一方で東日本大震災にみられたように,非常時にあって社会福祉の取り組みが,あらゆる人々に対して十分になされたとは必ずしも言い難い側面も見受けられた。こうした経験を貴重な教訓と捉え,社会福祉のより一層の充実を図るべく改善に取り組むことは,社会福祉関係者にとってこれからの大きな課題となっている。
こうした点から,今社会福祉を学ぶことは,社会の課題に向き合うことを学ぶことでもある。その意味では,社会福祉を学ぶことを通じて,社会福祉に関する実践について理解を深め,社会福祉を志し,従事する者としてあるべき姿を常に自らに問いかけるひたむきな姿勢が求められてもいるといえる。
近年は社会福祉にかかわる従事者の専門職化も図られ,併せて様々な福祉サービスの開発と,事業主体における福祉専門職の役割への期待が大きくなってきている。また,社会福祉以外の関係者や専門職の人たちに,社会福祉や社会福祉専門職に対する理解を深めていただくことも必要となってきており,第一線で業務にあたっている社会福祉専門職にもそれを説明することが求められてきているといえる。
本書ではそうした要請に応えるべく,社会福祉士,介護福祉士,保育士など社会福祉にかかわる専門職が,社会において十分に期待に応えることができるような基本的視点を養うことを目指した。それとともに,社会福祉にかかわる専門職が,様々な専門職とともに実践場面で重要な役割を担っていくための基本的な力を身につけることを狙いとして編集した。
社会福祉を学ぶ多くの学生や,社会福祉に関する基礎的な学習を目指す人々に,本書が広く活用されることを願ってやまない。
2015年3月
編著者
改訂にあたって
本書は,2015(平成27)年に初版,2017(平成29)年に第2版を発行してきた。そのような中,毎年のように社会福祉関係の法改正が相次ぎ,加えて2021(令和3)年度より,新しい社会福祉士養成のカリキュラムが順次導入されることとなった。これら一連の動きは,社会福祉分野に限らない福祉的視点の重視と,福祉行政の重点化ともいえ,本書もそれらに対応すべく,改訂版を発行することとした。
今日,少子高齢化が進行する一方,人口減少が進行し福祉対象者が増加している。これに伴い,制度の拡充だけではなく,地域社会や民間事業者の役割を重視する,社会福祉分野の新たな方向性を示唆する動きは見逃すことができない。
このような状況を受け,本書の改訂では,改めて社会福祉の基本的な考え方を捉え直したうえで,激変する社会の中における社会福祉の視点や機能をしっかりと押さえ,今後の方向性を確認できるよう,内容を見直した。
多くの方々に活用いただければ幸いとするところである。
2021年1月
編著者
目 次
序 章 社会福祉学を学ぶ
第1節 社会福祉学を学ぶ意義
第2節 社会福祉学の理解を深める
第1章 社会福祉とは何か
第1節 社会福祉の歯槽
第2節 現代社会福祉の理念
第3節 目的概念と実体概念
第4節 社会福祉の原理
第5節 社会福祉と人権
第6節 社会福祉の基本体系
第2章 社会福祉の理論
第1節 戦後社会福祉の展開と理論
第2節 社会福祉の対象とニーズ
第3節 社会福祉理論の研究史
第4節 諸外国の社会福祉理論
第3章 社会福祉の歴史
第1節 社会福祉の史的理解の意義
第2節 欧米の社会福祉の歴史
第3節 日本の社会福祉の歴史
第4章 社会問題と福祉政策
第1節 現代社会と社会問題
第2節 福祉政策の理念と概念
第3節 福祉政策と社会保障
第4節 福祉レジームと福祉政策
第5節 福祉政策のニーズと資源
第6節 福祉に関する施設や機関
第7節 社会福祉法人
第5章 援助技術と専門職(専門技術と国家資格)
第1節 社会福祉制度と専門技術および国家資格
第2節 社会福祉政策と専門職
第6章 福祉政策の展開
第1節 福祉政策の機能と構成要素の役割
第2節 福祉政策の展開耕造
第3節 福祉政策の展開過程
第4節 福祉政策としての公的扶助
第5節 福祉政策と福祉計画
第6節 福祉政策と包括的支援体制
第7章 福祉政策と福祉サービス
第1節 福祉政策における給付・サービスの供給体制
第2節 福祉政策と供給体制の構造
第3節 福祉サービスの利用課程
第4節 不服申し立て・リスク管理
第5節 対象領域別福祉制度
第6節 関連施策
終 章 社会福祉と福祉政策の課題
第1節 わが国の社会福祉制度と福祉政策
第2節 社会福祉の論点と課題
この本をみた方に
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