生きる力の基礎を育むための3つの資質・能力,幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を見すえ,人生100年時代を生きるこれからの子どもたちに本当に必要な保育を考えた。新要領,指針に準拠。
内容紹介
まえがき
まえがき
日本に初めて幼稚園ができた1876(明治 9 )年頃,日本の人口は約3,500万人だった。ベビーブームの1948(昭和23)年には,8,000万人となり,その後も人口は増え続け,
1967(昭和42)年には 1 億人を超える。1950(昭和25)年頃からしばらくの間は急増する人口,多すぎる人口が大きな問題になっている。この頃の「厚生白書」では,急激な人口増による「過剰人口」にどのように対応していくのか,ということが政策課題として取り上げられている。しかしながら,ピークとなった2012(平成24)年の 1 億2,800万人から一転して減少が始まる。我が国は,人口減少社会というこれまで経験したことのない時代を迎えたのである。今後10~20年の間に,今ある仕事の 5 割以上がロボットやAIにとって代わられるといわれている。その一方で平均寿命はさらに延び,人生100年時代となる。いま園で日々活動している子どもたちはこのような時代を生きていく。その道は決して平坦ではない。
保育は,どんな時代であろうと変わりなく,しっかりと育てておかなければならないものがある。それとともに,やがて来る時代を予測し,新しい時代をいきいきと,幸せに生きていくために必要な資質・能力を見極めて確かに育てることが,これからの保育に求められる。
2017(平成29)年,幼稚園教育要領,保育所保育指針,幼保連携型認定こども園教育・保育要領が大幅に改訂(定)された。その中で,「知識及び技能の基礎」「思考力,判断力,表現力等の基礎」「学びに向かう力,人間性等」という生きる力の基礎を育むための3つの柱を,幼児教育から一貫して育てることが打ち出され,幼稚園,保育所,幼保連携型認定こども園においては,この3つの柱を10項目の「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」とともに幼児教育を行う施設として共有する事項が示された。
豊かな時代の最盛期であった1990(平成 2 )年に施行された幼稚園教育要領,保育所保育指針では,保育の目標が心情・意欲・態度を中心に設定され,子どもの主体的な活動,言い換えれば子どもがしたいと思うことをする保育が求められてきた。知識や思考力が保育目標として前面に出されるのは長い保育の歴史の中で今回が初めてである。このあたりにも時代の大きな変化を感じ取ることができる。こうした中で,本書の執筆者は,未来を生きる子どもたちにとって本当に必要な保育とは何かを絶えず問いかけながら筆を進めた。
本書が,未来社会を生きていく子どもたちのための保育を創る一つの道標になれば幸せである。
2019年 3 月
執筆者を代表して 田中敏明
目 次
第1章 子どもたちの現状と子どもたちが迎える未来社会
1.子どもの現状
2.子どもが迎える未来社会予測
3.日本の子ども・世界の子ども
第2章 保育の意義・役割とこれからの課題
1.保育とは何か
2.保育の目標
3.これからの保育の課題
第3章 保育の場
1.保育所,幼稚園,認定こども園
2.家庭と地域の機能と役割
3.保育所,幼稚園,認定こども園の役割
4.保育の現状と課題
第4章 保育の多様性
1.幼稚園教育要領・保育所保育指針等が求める保育
2.日本の保育の特色
3.モンテッソーリ教育
4.プロジェクト法
5.韓国のテーマ中心型保育
6.ニュージーランドのラーニングストーリー
第5章 保育課程・教育課程と指導計画
1.計画の必要性と種類
2.保育計画を作成する
3.保育課程・教育課程,指導計画作成の見直し
第6章 保育の質を高める
1.保育記録の取り方
2.研修の選択と実際
3.環境の構成と保育実践のポイント
4.保育評価
5.保育の質を高める
第7章 子育て支援,家庭・地域との連携
1.日本の子育て支援の現状と課題
2.就学前施設と地域との連携
第8章 人間性を育てる
1.人間性を育てることの大切さ
2.人間性を育てる保育
3.人間性を育てる保育の実践
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