保育の起点としての子ども理解を,本書の理論やエピソードを読み解くことを通してより深く理解し,より実践力が高められるように構成。
内容紹介
まえがき
はじめに
みなさんがご存知のように,2017(平成29)年に幼稚園教育要領,保育所保育指針,幼保連携型認定こども園保育・教育要領が改訂(改定)されました。この改訂(改定)は,おそらく戦後二番目の大きな変化であったように思います。一つは,幼稚園,保育所,認定こども園の少なくとも幼児に対する教育が統一されたことです。またもう一つは,幼児期から小学校,中学,高等学校までを「主体的・対話的で深い学び」という概念で,一本化したことでしょう。この変化によって,これからの保育現場も,保育の方法を改めて問い直し,変わってくこと(あるいは変わらなければならない)でしょう。
しかしながら,一方で保育を行う上で変わらないこともあります。それは保育という営みの中で,本質的,中心的,根源的なものであろうと思いますが,これから保育者(幼稚園教諭・保育士・保育教諭をいう)になることを志す皆さんにとっては,眼前の「子どもを理解する」ことは,その最たるものだろうと思います。
ここでいう「子どもを理解する」こととは,映画やドラマでよく見られるような方法で,子どもの内面をわかった気になることではありません。保育者として「子どもを理解する」こととは,その場にいる子どもに心を寄せ,時空間を共有することで感じられることを手掛かりに,その子の営みを読み解くことなのです。
本書は,保育現場での子どもの営みを物語としてとらえ,それを理解しようとする試みを「子ども理解」とした上で,実際に保育者として必要な「子ども理解力」の基礎・基本から,エピソードを通して理解力を高められるように構成しました。保育者としての皆さんの物語は,まだここから始まったばかりです。本書で学んだことが学び続ける保育者としての土台の一助となれば幸いです。
2021年4 月
編者 上田敏丈
目 次
第1章 子ども理解から始まる物語
1 本書のねらい
2 物語としての子どもを理解すること
第2章 子ども理解の理論的枠組み
1 保育の営みにおける子ども理解の位置付け
2 子ども理解の視点
3 子ども理解の実践的アプローチ
4 保育者と子どもの関係性の中で生じる“わかり合い”を目指して
第3章 子ども理解から始まる保育の計画
1 保育の起点としての子ども理解
2 保育者と子どもの往還的関係としての子ども理解
3 保育の終点としての子ども理解
第4章 子どもの育ちを理解する-発達心理学の視点から-
1 子ども理解における発達心理学の視点
2 子どもの育ちを理解すること
第5章 子どもの心の機微を理解する-臨床心理学の視点から-
1 子どもの心の機微を理解するために
2 保育者に求められる臨床倫理学的視座
第6章 事例・対話・協働に基づく子ども理解
1 子ども理解を共有することの重要性
2 私の子ども理解から私たちの子ども理解へ
3 どうして共有するのか
4 子ども理解の方法の広がり
第7章 子ども理解を深化させる記録
1 子ども理解のための多様な記録
2 記録の活用法
3 記録の書き方
第8章 子ども理解を深める保育者を育てる
1 養成校教育におけるこども理解
2 学生の子ども理解の育ち
3 エピソードからの学びの深化
第9章 乳児の遊びと生活をとらえ直す
1 乳児にとって遊びとは
2 エピソードから理解する乳児の遊びと生活
3 まとめと課題
第10章 幼児の遊びをとらえ直す
1 幼児にとっての遊びとは
2 幼児の遊びの楽しさや充実感
3 幼児の遊びの中の学びと保育者の葛藤
4 幼児の遊びと生活のつながり
5 まとめ
第11章 障害のある子どもを関係性の観点から理解する
1 エピソードから考える
2 エピソードに基づく考察
3 障害のある子どもの理解は,保育者自身の在り方の問い直しでもある
第12章 困った子どもの行動を理解する
1 困った子どもとは
2 困った子どもへの対応と理解
3 困った子どもを理解する視点
4 まとめ
第13章 地域・家庭との連携を理解する
1 保護者への子育て支援を理解する
2 子どもの噛みつき行動への対応を通して
3 登園を渋る子どもへの対応を通して
第14章 就学前施設での子ども理解の深化
1 就学前施設における幼児期の教育の理解
2 子どもの言葉の意味を探る
3 子ども一人一人の育ちを理解する
4 保育の営みと子どもの理解
おわりに
1 人は,自分以外の心情を理解することができるか
2 人は,自分の心情を他者に伝えることができるのか
この本をみた方に
おすすめの書籍
-
-
pickup
保育者論
新たな保育士養成課程,教職課程に対応した新刊。保育者としてだけでなく,社会人としてのあり方にも言及し,ケーススタディーも収載。
-
-
-
pickup
教育相談
子どもを取り巻く問題を網羅的にとらえ,解決に向けた開発的カウンセリング技法等の支援スキルを学べる教育相談のテキスト。
-
-
-
pickup
教育原理
教育の理念,歴史,方法,内容,制度を豊富なトピックを交えながら理解しやすく編集。保育者,小学校教諭をめざす人のためのテキスト。
-
-
-
pickup
保育の心理学
保育士養成課程の「保育の心理学」のテキスト。子どもの発達論,学びの理論と保育,各年齢別の発達特性と課題をイラストを交えながらコンパクトに解説。事前・事後学習ワークシートはダウンロードできる。
-
-
-
pickup
身体表現
身体表現の基礎的な事項を示し、身体感覚と結びつく7つの視点から,保育に役立つ遊びを紹介。QRコードを掲載し,身体表現遊びの内容を動画で学ぶことができる。保育に関わる全ての人が活用できる1冊。
-
書籍に関する
感想・お問合わせ
下記フォームに必要事項をご入力いただき、一旦ご確認された上で送信ボタンをクリックしてください。
なお、ご返信さしあげるまでに数日を要する場合がございます。