平成22年9月1日
管理栄養士に求められる栄養マネジメント力
常磐大学 教授 東條 仁美この著者の書いた書籍
管理栄養士の業務について,現行の栄養士法第一条二項に,①各傷病者(患者)に対しては病態等を詳細に把握し,きめ細かい栄養管理を実施する,②特定多人数の給食施設に対しては全体の栄養管理を把握し,適正で詳細な指導を行うことが謳われており,管理栄養士には高度な業務内容とその実践が求められている。
各職域の現状をみると,例えば,特定健診・特定保健指導制度が発足・進行している現在,生活習慣病の予防や,積極的な健康づくりが,管理栄養士・保健師・医師を中心に実施されている。管理栄養士は医師・保健師らとともに協調しながら,対象者としっかり向き合い職責を果たすなかで,「食と健康をつなぐ専門家」であるという点に誇りをもち,より広く社会貢献を果たすことができる。
また,病院での管理栄養士業務においては栄養部門の責任者として多岐にわたる栄養管理の責務を負っているだけではなく,患者様への栄養相談・指導・支援,ならびに医師・看護師・薬剤師らとの協調した業務の遂行も必須である。病院栄養士は高度な栄養の専門知識と技術を備えていなければならないことは当然であるが,院内で医療スタッフと連携し,業務を遂行・管理していくことも大切である。
学校栄養士においては,栄養教諭が学校における食育の牽引車としての役割を受け持ち,児童・生徒への集団指導教育,児童・生徒や保護者への個別的指導・助言,学校全体における指導教育の調整・連携など,学校給食の管理を一体的に担っている。
栄養教諭単独での取り組みには限界があり,管理職の理解,学級担任や養護教諭との連携・協力なくしては食育を効果的に進めていくことはできない。効果的な食育を実行するためにはすべての教職員に対して意識を高めるように働きかけ,周囲の人と協力しながら仕事を進める必要があり,コミュニケーション能力も重要である。
このように,管理栄養士が栄養マネジメントをしっかりと実行するためには,あらゆる力量を備えなければならない。栄養マネジメントには,生体内で営まれている栄養の管理,つまり身体に視点を置いた栄養管理と,管理栄養士として組織のなかで業務遂行する栄養管理がある。すなわち,マネジメントを円滑に行うためには,広範な栄養学の知識をもつ一方で,機能的なシステムや手順,協力体制やコミュニケーションスキルを確立し,組織全体に配慮しながら,プログラムの実施方法を調整する力を身につけなければならない。
栄養マネジメントを適切に行うためには,その基本と過程をしっかりと確立させる教育体制が必要であり,揺るぎない栄養マネジメント力と人間力を備えた管理栄養士の養成が望まれる。
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