平成23年1月1日
EPAに基づく外国人介護福祉士候補者への国家試験の配慮
山野美容芸術短期大学教授 白井 幸久この著者の書いた書籍
経済連携協定(EPA)に基づいて,初めてわが国が受け入れた介護福祉士候補者は,2008年8月にインドネシアから来日した104人で,三年の実務経験を経て2012年1月の「第24回介護福祉士国家試験」を受験する予定である。
最長四年の滞在期間中に受験の機会は一回のみである。合格すれば介護施設で働き続けられるが,不合格になれば帰国しなければならない。
日本人受験者の合格率も50%程度の状況で,日常的な日本語さえ理解できない外国人に高合格率を期待することはできないであろう。このような現状から,国家試験の問題文の漢字にふりがなをつけることなどの配慮が求められてきた。
政府は2010年6月の閣議で「規制・制度改革に係る対処方針」を決定した。その中で,国家試験における「EPAに基づく看護師,介護福祉士候補者への配慮」を規制改革の項目のひとつとして掲げるとともに,2010年度中に措置することが示された。
EPAによる介護福祉士候補者が受験するのは来年度以降に予定されるが,これらの閣議決定などを踏まえるとともに,看護師国家試験の対応方針を参考にして,今年度の第23回試験から適用することを厚生労働省は示した。
具体的には,「今後の介護福祉士国家試験における用語の取扱いについて」で内容が示されている。その内容の概要は以下のとおりである。
①易しい用語に置き換えても,介護現場が混乱しないと考えられる用語
・難しい表現は,易しい用語を使って置き換える。
例)光源を設ける → 照明を設ける
・常用漢字以外の漢字には原則としてふりがなをつける。常用漢字であっても必要なものにはふりがなをつける。
例)几帳面(きちょうめん)
・長い複合語で分解しても問題ないものは, 言葉を補いわかりやすい表現にする。
例)加齢変化 → 加齢による変化
②介護,福祉,医療などの学問上・法令上の専門用語
・学問上・法令上の専門用語は,原則として置き換えは行わない。
例)介護支援専門員,地域包括支援センター,自立支援給付など
・一般的な用語と同様に,常用漢字以外の漢字には,原則としてふりがなをつける。
常用漢字であっても必要なものにはふりがなをつける。
例)下痢(げり),麻痺(まひ)
・英語の正式名称および一般的に使用されている日本語を併記する。
例)ADL → ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)
・疾病名への英語併記(症病名への英語併記は行わない)。
例)肺結核 → 肺結核(pulmonary uberclosis)
EPAに基づく外国人介護福祉士候補の受け入れについてはさまざまな議論があるが,受け入れた以上は,わが国の介護福祉士界・来日した介護福祉士候補,両者にとって実のあるものとすべきであろう。今回の試みに期待し,その成果を見守りたい。
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