平成23年9月1日
保育士養成課程の新設科目「保育相談支援」「相談援助」の意味
共立女子大学教授 全国保育士養成協議会常務理事 大嶋 恭二この著者の書いた書籍
保育士養成課程が平成23年4月より改正されている。これまでも,保育・福祉ニーズに直接・間接に影響する社会・時代の変化や保育所保育指針の改定等を受け,養成課程が改正されてきた。今回も保育所保育指針が改定されたこと(平成21年4月より施行),虐待の増加等に典型的にみられる家族の養育機能の脆弱化の傾向や,何らかの意味で特別な配慮の必要な子どもの増加等,児童・家庭問題の複雑化・多様化等を背景として,これらの変化に対応できる保育の質の向上および保育士の専門性の向上を図る観点等から見直されている。
改正では,「保育相談支援」が新設された。教授内容は,厚生労働省の「保育士養成課程等の改正について(中間まとめ)」では,「保育所保育指針第六章(「保護者に対する支援に関するもの」)の内容を踏まえ,保育実践に活用され,応用される相談支援の内容と方法を学ぶ。その際,『相談援助』,『家庭支援論』等の科目との関連性や整合性に配慮することが必要である」とされている。
この「保育相談支援」という科目は,現代の家庭の養育機能の低下,不安や課題を抱えた保護者の増加など,児童,家庭をめぐる今日的状況を背景として,児童福祉法第十八条の四に基づいた国家資格としての保育士に要請される子どもの保育と,保護者に対する保育に関する指導という業務のうちの,どちらかといえば,後者の保育に関する指導に対するものに中心を置いているものである。すなわち,保育に関する専門的知識・技術や,倫理・価値等を背景とした保育の専門性に基礎を置いた保護者支援について学ぶものである。
したがって,保育の専門性を生かした保護者への支援,すなわちソーシャルワーク的機能の遂行のためには,基礎的な学びとしての「相談援助」(これまでの「社会福祉援助技術」)が密接に関係しており,重要である。すなわち保護者を受け止める,保護者の気持ちに共感し寄り添う,話をよく聴くなどという,保護者等(クライエント)との信頼関係構築のための知識・技術は,相談援助(ソーシャルワーク,特に「個別援助技術」(ソーシャルケースワーク))が基本となるものである。
以上,ここでは,今回の改正のうち「保育相談支援」に焦点をあてたが,この度の「保育士養成課程等検討会」は期限が限られていたこともあって,まず,二年間を基盤とする保育士養成課程および保育士試験について検討したものである。四年制保育士養成課程の創設や大学院教育による保育士養成,保育士養成施設(養成校)卒業に加えて国家試験を課すこと,現行の保育士試験のあり方や保育士のキャリアアップ等についての論議は不十分であり,今後検討すべき課題として残されており,引き続き検討されることになっている。
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