平成27年1月1日
地域包括ケアシステムと医療事務職
東京豊島IT医療福祉専門 学校副校長・社会福祉士 鈴木 嘉孝この著者の書いた書籍
2014年6月18日,参議院で医療法や介護保険法など19法案を一括して見直す「医療・介護総合推進法」が可決,成立した。団塊の世代が75歳以上になる2025年に向けて,医療・介護の費用は膨張し,給付の効率化と重点配分は不可欠であり,医療・介護一体改革は避けて通れない。2018年の診療報酬・介護報酬同時改正予定へ進んでいる。
比較的軽度の「要支援者」向け介護保険サービスの見直しで,訪問・通所介護を全国一律の保険サービスから外し,市町村が独自に内容を決めて実施する方式となった。財源を重度者へ重点的に振り分けることも必要になる。介護保険では,収入の多い人の自己負担割合を一割から二割に引き上げ,特別養護老人ホームの入所要件も厳しくする。課題も多い。担い手の確保が難しい市町村は少なくない。サービスの地域格差の拡大や質の低下を懸念する声も根強い。高齢者が適切なサービスを受けられなければ,症状の悪化を招く恐れがある。市町村は,住民主体の街づくりのチャンスととらえ,政府は,先駆的なノウハウを紹介し,事業展開に関する具体的な運営指針を示すなど,市町村を支援していく必要がある。施設や病院に入れない人が「介護難民」とならないよう,地域ぐるみで在宅の高齢者を支えることが必要となる。
限られた財源で,増大する高齢者の医療・介護ニーズに対応するには,医療や介護,生活支援を一体的に提供する体制を築き,給付費を抑制しなくてはならない。高齢者が病院や施設に頼らず,在宅生活を続けられるようにする。具体的には,退院支援を重視し病院・病床の再編を図り,在宅医療を推進する。専門機関・専門職のネットワークと住民主体のネットワークを組み合わせて地域ぐるみで支え合う仕組みをつくり,地域包括ケア病床を踏まえて地域包括ケアシステムの医療介護提供体制改革を進め参加型の地域社会を構築していくことが必要である。
今後,医療事務職に求められる知識・技能は何か。例えば,主な業務の一つである診療報酬請求事務について,退院後,利用する介護保険によるサービスとの関係を考慮せねばならない場合もあることから,従来のような診療報酬プロパーの知識だけでなく,社会福祉・介護福祉の制度やその運用についての知識も必要になってくると考えられる。
また,専門職をサポートするという立場からは,MSW(医療ソーシャルワーカー)とのより緊密な連携が必要になると考えられるし,私たち教育する側の視点では,IPE(専門職連携教育)への配慮も将来は必須となってくるだろう。
私は,求められている知識,技能と教える内容にギャップがないように柔軟に教えるようにしている。この業界で仕事をしたい入学生,受講生を増やす役目も教員にはあると思う。また,受講生に医療秘書教育全国協議会主催の「医療秘書技能検定試験」「福祉事務管理技能検定試験」を必ずチャレンジさせている。合格目標をもてば学ぶ意欲が促される。「あなただけに与えられる資格証明書というプレゼントが得られる」と話している。
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