建帛社だより「土筆」

平成28年1月1日

大学教育におけるケーブルテレビ向け番組制作の取り組み

目白大学専任講師  西尾 典洋この著者の書いた書籍

 年,パソコンやスマートフォンなどの高性能化によりインターネット上の動画を簡単に観られるようになった。今後も動画コンテンツのニーズは高まると予想され,既存のテレビ局や番組制作会社だけでなく,多方面の企業,団体が動画コンテンツの企画・制作に乗り出すと予想される。

 のようななか目白大学社会学部メディア表現学科では,動画コンテンツを自ら企画し,制作できる人材を育てるための取り組みを行っている。

 の一つは,ケーブルテレビ放送局向けの情報番組の制作である。2007年よりケーブルテレビ局のコミュニティチャンネルで放送する情報番組の制作を行っている。現在は奈良県の放送局で毎月番組を放送している。2012年にこの取り組みを私が引き継ぎ今年で4年目となる。番組で取り上げる内容は多岐にわたり,一般的な時事問題や若者の流行調査,大学が立地する新宿区内を中心としたイベントのレポートなどである。

 組制作にかかわるのは私のゼミに配属される三年生10名で,テレビ番組をつくるのは初めてである。番組制作を通じて映像制作の技術力だけではなく様々な能力が求められる。

 組完成までの流れを大きく分けると「リサーチ」「企画」「撮影」「編集」の四段階となる。企画の段階では,取材を受けてくれる団体を探し,取材交渉する。多くの場合,大学外の大人との交渉となる。その際,会社への電話のマナーを知らなくてはならない。取材先によっては企画書が必要なため,e-メールやFAXの送り方なども学ぶ必要がある。

 材では,コミュニケーション能力が求められる。初めて会う取材相手から本音を引き出すために相手が言っていることを瞬時に理解し,言葉のキャッチボールを続けていかなくてはならない。取材経験の浅い学生にインタビューをさせると,事前に用意した質問をそのまま投げかけ,答えを聞いたら次の質問に移る「一問一答」になってしまうことが多い。そのような素材は編集しづらい。ある質問を手がかりに話を盛り上げていき,深掘りしていくことが求められる。

 月番組制作を続けているため,学生の拘束時間はかなり長いのが現状である。そのために制作が始まるとつらいと感じる学生も少なくない。しかし一年間番組制作を続け,四年生になって次の学年に制作を引き継ぐ頃には,立派に成長し,後輩の指導ができるまでになる。周りからも評価され,それが彼らの自信にもつながっている。

 のような学生たちとともに大学外の会社から依頼を受けた映像教材の制作プロジェクトにも携わっている。昨年度(平成26年度)は医療的ケアの教科書の付録DVDや,SNSの正しい使い方を小中学生に考えさせるDVDを作成した。このような取り組みは,就職活動の際に学生たちが履歴書でアピールできるのでありがたい。

 ロジェクトを引き継ぎ二代の卒業生を送り出した。学生たちは会社に入り,即戦力として活躍している。ときどき大学に遊びに来る彼らに話を聞けることが,この活動を続けていく一番の楽しみである。

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第103号平成28年1月1日

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