平成23年1月1日
持続可能な循環型社会への視点
東京家政大学教授 岡田 宣子この著者の書いた書籍
ヒトの心も自然に解け合いほっとさせてくれる里山が見直されている。自然を破壊し続けてきた現在,自然との共生,地球環境保全の生活に思いを馳せる必要がある。
食料不足の国がある中で我が国の年間1,900万トンの食品廃棄物中,本来食べられる食品ロスは賞味期限切れを含めると500万~900万トンだという。資源に極力戻す行政の広い視野に立ったシステムづくりが待たれる。
一方生活者も食べ残しを防ぎコンポストで生ゴミを再生したり,環境家計簿の活用などでCO2の削減に励み,ロハス(Lifestyles Of Health And Sustainability),健康と環境の持続可能性に配慮したライフスタイルを主体的に選びながら,低炭素社会で生物多様性が守られる,持続可能な循環型の社会をめざしたい。
2001年にはグリーン購入法が導入されて,行政の政策・指導,企業の取り組み,生活者の意識を高めた責任ある行動が求められつつあり,循環型社会を確立するための廃棄に関する3R(Reduce・Reuse・Recycle)や,資源利用の抑制やRepair・Rentalが着目されている。
ヒトはサルから生物的進化をし,文化的・社会的進化を辿り,「着装するヒト」となった。成長や加齢に伴う体形変化に合わせ,四季で衣服を替え,豊かな服飾文化を築いてきた。しかし,一生にわたりヒトは,地球の資源を衣服に大量に使用し続けているのである。
自然のめぐみに感謝し手織り手作りする時代から,産業革命以降,合成繊維や加工など化学工業が発展し,とめどない欲望が渦巻く大量生産・大量消費・大量廃棄の時代を経て,現在は,物を慈しみ心の豊かさを求める時代に移りつつある。しかし,生産される衣服の資源の流れは生活者の目の届かないブラックボックスに入ってしまっている。
衣生活に着目して循環型社会をみると,繊維リサイクルに向けて日々研究が進められているが,衣服のリサイクル率は2009年度で11.3%と低迷している。企業の多くの取り組みに生活者も呼応し,エコマークやグリーン購入ネットワークの情報等から資源の流れを知り,衣服購入ガイドラインの,①環境に配慮した素材,②省エネルギー・省資源につながる製品設計,③長期使用設計製品,④回収資源のリサイクル可能品,のうちどれか一つ以上に該当するか,環境配慮包装・修理できるかなども考慮し,主体的にグリーン購入を促進することが重要となる。
環境省は「自然・生命」「エネルギー・地球温暖化」「ごみ・資源」と,「ともに生きる」を加えた四つの分野にわたった環境教育を小学生から「生活」「社会」「理科」「家庭」「道徳」「技術・家庭」などで段階的に取り込む計画である。①地域における環境保全活動への参加,②学校での環境教育,③家庭でのしつけ・エコライフの日常生活での実践を,家庭・地域が連携し,持続可能な社会に向けた人づくりを推進していく。
疲弊する地球の現状に前向きに実行する能力が問われている。そのためには教育に携わる私たちも意識を高め,折に触れて情報発信し,教育に反映させるよう努力することも必要ではないかと考える昨今である。
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