建帛社だより「土筆」

平成26年1月1日

地域包括ケアシステムを考える

社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長 神野 正博この著者の書いた書籍

 本の少子高齢化は加速する。働き盛りが多かった時代における医療の役割は「治す医療」「救う医療」であったが,今後は,「癒す医療」「支える医療」「共に生きる医療」「看取る医療」が求められる。そこでは,地域における健康のお世話=ヘルスケアとして,医療や介護,さらには福祉,保健に至る強い連携が求められている。

 川県七尾市は,人口58,000人,高齢化率30%に達する。その北の奥能登と呼ばれる能登北部地域の高齢化率は40%に達するうえ人口減地域である。当法人は,この地域で「けいじゅヘルスケアシステム」として,主に急性期から回復期医療を担う426床の恵寿総合病院を基幹とする社会医療法人と,身体・知的障害者や高齢者の福祉サービスを提供する社会福祉法人からなる,いわゆる医療福祉複合体を経営する。病院以外に4つの診療所,5つの入所施設,18の通所施設,その他在宅サービス(居宅介護事業所・訪問看護・訪問介護・小規模多機能型居宅介護等)21施設,総入院入所ベッド数は約1,300床である。

 たちはビジョンに“先端医療から福祉まで「生きる」を応援します”を掲げ,医療・介護・福祉施設を連携させた切れ目のない,しかも面倒見のいいヘルスケアの提供を目標としている。

 生労働省(国)の提唱する「地域包括システム」では,地域で支える体制として「生活支援・介護予防」「在宅医療」等が強調される。しかし,医療分野と介護分野に対する日本の縦割り組織と縦割り意識に横串を刺す仕組みなくして,このシステムの成功はないだろう。急性期・救急医療から,回復期・慢性期医療までの途切れることのない垂直統合が求められ,加えて地域での介護を含めた「面」の展開が求められているのである。

 こで,当法人では,先述の施設やサービスを縦横に連携させる仕組みとして,1997年以来,全施設を光ファイバー線によりオンライン化した。すべての施設,すべてのサービスで1患者・1利用者=1IDとし,電子的にデータや経過情報を共有してきた。デフォルトでは病院内の電子カルテしか閲覧できないが,設定を変更すれば,当該患者・利用者の介護老人保健施設やデイサービスセンターでの情報,訪問介護の記録までもが同じ画面で時間軸に沿って閲覧できる。このような情報のグループ内共有化こそが,文字どおり切れ目のないサービスの提供につながるものと確信している。さらに,利用者にやさしい電話情報窓口として,2000年にはコールセンターを立ち上げた。医療を含めたすべてのサービスにおける予約やキャンセル,さらには質問・要望やクレームの窓口となっている。

 閣官房のIT戦略本部の進める実証事業「シームレスな地域連携医療の実現」に恵寿総合病院も加わったが,私たちのシステムは医療と福祉との緊密な連携のひとつのモデルになりうるものと考えている。

目 次

第99号平成26年1月1日

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