平成27年9月1日
今後の四年制大学における介護福祉士養成の役割
介護福祉士養成大学連絡協議会会長 目白大学教授 荏原 順子この著者の書いた書籍
本年2月に出された「2025年に向けた介護人材の確保~量と質の好循環の確立に向けて~」(社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会)で,2025年までに介護福祉士資格取得者を介護職の中核的存在として位置づけることが示された。それにより介護職の社会的評価を確立する方向性を目指すというもので,介護福祉士養成校としては「質の確保」が,これまで以上に真剣に取り組まねばならない課題となった。
介護福祉士登録者数は増加傾向にあるが,2013年度は約118万人,そのうち国家試験受験者は約88万人,養成校卒業者は約30万人であった。現在,介護福祉士養成校は定員割れの傾向にあり,今後これ以上の卒業者の量的確保は望めそうにない。そのため,養成教育の質を向上させることで貢献していくことが重要な役割となる。
このような状況のもと,介護福祉士養成大学の役割は何か。何をすべきなのか。
昨年,介護福祉士養成大学連絡協議会では「今後の四年制大学における介護福祉士養成教育の在り方」を検討するため,全国の介護福祉士養成大学に対しアンケート調査を行った。その結果,社会福祉士国家試験の受験資格取得を目指した教育課程と併用しているところが多いため,一般的な大学卒業の基本要件の124単位を大幅に超える単位数(約170単位等)を取得している現状が明らかになった。また,四年制大学卒業の介護福祉士としての強みは何かという点で,単に「技術ができる」「即戦力となる」といったことではなく,四年間の学びという量と質の内容によって,介護福祉の根拠となる知識や技術を修得できるという回答が得られた。そして,大学での基礎科目等の履修をバックボーンとして,利用者・介護職チーム・他職種等と連携する能力が得られるという回答もあった。
介護福祉士養成大学連絡協議会では,この結果をもとに,介護福祉士養成大学の現在的な位置,卒業後のキャリアデザインの方向性を柱として「上級介護福祉士(仮称)」の提案をした。現在の教育科目を再検討し,「教育・研究関連科目」や「マネジメント関連科目」等も入れ,1850時間プラスαの教育で資格を認定できるようにする。キャリアアップは大学院で行い,教育・研究領域では「研究者」や「介護教員」を目指す。実務領域では,介護福祉士養成大学卒は認定介護福祉士研修の単位互換ができるようにし,認定介護福祉士の研修を受けやすくしていく。これは,アンケート結果のまとめの内容から見えてきた四年制大学で介護福祉士養成を行う利点,強みを生かし,さらに伸ばしていけるようにしていくための仕組みづくりである。
議論は今後も必要で,厚生労働省が提案している「教育体系の確立」「専門性に応じた役割と位置付け」の観点から検討していくべきと考えている。われわれ教員はそれをもとに,これからの介護職の中核を担うにふさわしい,リーダーとしての資質の基礎となる教育を行っていきたい。
目 次
第102号平成27年9月1日
発行一覧
- 第121号令和7年1月1日
- 第120号令和6年9月1日
- 第119号令和6年1月1日
- 第118号令和5年9月1日
- 第117号令和5年1月1日
- 第116号令和4年9月1日
- 第115号令和4年1月1日
- 第114号令和3年9月1日
さらに過去の号を見る
- 第113号令和3年1月1日
- 第112号令和2年9月1日
- 第111号令和2年1月1日
- 第110号令和元年9月1日
- 第109号平成31年1月1日
- 第108号平成30年9月1日
- 第107号平成30年1月1日
- 第106号平成29年9月1日
- 第105号平成29年1月1日
- 第104号平成28年9月1日
- 第103号平成28年1月1日
- 第102号平成27年9月1日
- 第101号平成27年1月1日
- 第100号平成26年9月1日
- 第99号平成26年1月1日
- 第98号平成25年9月1日
- 第97号平成25年1月1日
- 第96号平成24年9月1日
- 第95号平成24年1月1日
- 第94号平成23年9月1日
- 第93号平成23年1月1日
- 第92号平成22年9月1日
- 第91号平成22年1月1日
- 第91号平成21年9月1日
- 第90号平成21年1月1日
- 第89号平成20年9月1日
- 第88号平成20年1月1日