平成29年1月1日
多文化・国際化に対応できる保育者・教師の養成
修紅短期大学教授 咲間 まり子この著者の書いた書籍
現在,保育・小学校の現場では,「外国につながる子ども」が増加しており,保育・教育の多文化・国際化に対応できる保育者・教員の定着が至急の課題として浮上してきている(ここでは,両親の片方あるいは両方が外国人の子どもや,帰国子女を「外国につながる子ども」とする)。
内閣府の試算によれば,日本の総人口は2060年には8,674万人と2016年の1億2,699万1千人の68%まで落ち込み,高齢化率は約40%にまで達する。抜本的な少子化対策が困難な現状を鑑みれば,外国につながる子どもや保護者のマンパワーは,少子化に悩む地域を活性化する新しい芽でもあり,持続可能な社会を構築するうえで不可欠なものと考える。
しかし,外国につながる子どもや保護者が様々なストレス等の状況を呈しはじめていることは筆者の調査からも明らかになっている。
これまで,諸外国や日本の現状を踏まえながら,外国につながる子どもや保護者への支援の実際を学び,多文化保育・教育のあり方について考えるため,「保育原理」の授業の中で「多文化保育・教育論」について,2年間授業を展開してきた。多くの学生は多文化保育・教育の枠組みを「多文化環境≒外国人のいる環境」に関するものという漠然とした印象でとらえ,「外国人」の概念も遺伝的背景や国籍・出生地を問わず,日本人以外と単純に把握するに留まるケースが多かった。
石暁玲氏(東京福祉大学)が,心理学部1年生を対象に,アクティブ・ラーニングを取り入れた「多文化保育・教育」の授業のなかで,留学生が体験した日本人の印象を以下のように述べている(日本保育学会第69回大会シンポジウムより)。
「あなたは外国人でしょうか。日本語が上手ですね」とよく言われるが,「日本語が上手」というほめ言葉は社交辞令に感じる。また,日本人と外国人という区別をしなければ,日本語が上手かどうかの判断をしないはず。外国人の日本語をほめるのは義務的な印象を受けるし,上から目線のように聞こえる。
社会保障審議会児童部会保育専門委員会による「保育所保育指針の改定に関する中間とりまとめ」(平成28年8月2日)の(4)保護者・家庭及び地域と連携した子育て支援の必要性では「…外国籍家庭など,特別なニーズを有する家庭への支援についても,配慮する必要がある」とあり,また,(5)職員の資質・専門性の向上では「…保育士には,より高度の専門性が求められるようになってきている」とある。
多文化・国際化教育は,急速な多文化共生社会への変化に伴う現代の保育・教育課題の1つであると言える。将来,保育者や教師をめざす学生が,保育者養成課程における多文化・国際化教育の理論および実践に関して学ぶことは,現代の保育・教育課題に対応できる専門性のある保育者・教師の養成につながると考える。
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