平成30年1月1日
学校給食を生きた教材として行う食育
鹿児島純心女子短期大学教授 中馬 和代この著者の書いた書籍
平成17年度から栄養教諭制度がスタートし,早くも12年が経過した。鹿児島県では平成18年度から栄養教諭が配置され,以後3年間で学校栄養職員から栄養教諭への任用替えがほぼ完了した。
このように早期に栄養教諭の設置が進んだ背景には,学校栄養職員が早くから本県の特色を生かした給食に取り組み,それと一体化して食に関する指導を推進してきたことが,関係者に評価されたものと認識している。
学校における食育は,食に関する指導としてすべての教育活動を通して行われる。中でも毎日の給食の時間は,小・中学校の義務教育9年間,実際の一食分の食事をもって継続して行われる食育の場である。児童・生徒の年齢に適した食事の量,食品名,食品の組み合わせ,料理名,調理方法,栄養量,栄養素の働きなど,毎日の給食を生きた教材として継続した指導を行うことで,児童・生徒が「このような食事をとれば,健康な毎日を過ごすことができ,丈夫な身体がつくられ,成長できるのだ」と認識し,その体験の積み重ねが自己管理能力を形成していくことにつながる。
毎日の給食を食べながら体得していく食育実践,そこにはおいしい給食とともに栄養教諭や担任教員等による適切な指導が必要であることはいうまでもない。栄養教諭は学校における食育の核として活躍している。
本県の学校給食の特色は,豊富な地元の食材を活かした給食にある。南北600㎞にも及ぶ県土は,農・畜・水産物いずれも全国有数の生産地であり,食材に恵まれている。それらの食材を活用した独特の郷土料理も多く存在する。
各市町村や給食センター毎に地場産物の納入組織がつくられ,年間を通して地元産の新鮮な食材が使用されたおいしい給食が提供されている。
また,奄美の鶏飯や豚骨の味噌煮,きびなご料理やさつますもじ等の郷土料理は,給食の献立として広く活用され人気のメニューである。
学校給食に地場産物や地域に伝わる郷土料理を活用することは,児童・生徒が郷土への関心や理解を深め,郷土を誇りとし,食文化の継承,食を取り巻く多くの人びとへの感謝の心を抱かせ育くむ等多くの教育的効果が期待できる。
栄養教諭は,管理栄養士または栄養士免許をもち,栄養に係る教育および教職に関する科目等を修得し,栄養に関する専門性と教職に関する専門性を兼ね備えた教育職員である。平成29年8月,岐阜県において「第一回栄養教諭食育研究大会」が開催された。その中で「鹿児島県での栄養教諭導入による10年間の学校給食における地場産物の活用」と題して,地場産物の活用状況の変容と食に関する指導との関連を統計解析して論文にまとめて発表した。エビデンスを創出できる栄養教諭を目指す私たちの研究が,栄養教諭の資質向上に役立ち,専門性を発揮した学校における食育の推進につながることを願っている。
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