平成30年1月1日
デジタル教科書元年に思う (社長年頭の辞)
あけまして
おめでとうございます。
本年も宜しくお願い致します。
昨年はカズオ・イシグロ氏がノーベル文学賞を受賞しました。出版不況といわれるようになって久しい日本の出版界に,久しぶりの嬉しいニュースとなりました。
2016年の国内の調べでは,1日の読書時間は平均15分との統計があります。先生方から「しっかりした内容の教科書を使いたいが文字が多いと学生がついてこられない」ということをお聞きすることが度々あります。私が学生だった約20年前は,文字の小さな教科書然とした教科書が多く,確かに一回生の専門科目では読みこなすのに大変苦労しましたが,卒業研究の際にはその教科書を何度も読み返し,大いに役立った記憶があります。初めは多少苦労することもありますが,本に触れ文字に慣れていくことで読書の習慣もついていくのではないでしょうか。今回のイシグロ氏の受賞が,活字離れの進む若い世代の人びとが読書を始めるきっかけになればと願うばかりです。
昨年は学習指導要領,幼稚園教育要領,認定こども園教育・保育要領が改訂され,保育所保育指針が改定された年でもありました。弊社刊行物の柱の1つである教育,保育・幼児教育分野に大きくかかわる内容のため,関連する教科書をご執筆いただいている先生方には,新刊・改訂版の企画で例年になくお力をお借りしていることと思いますが,ご助力いただければ幸いです。
今回の学習指導要領の改訂を受け,小学校では2020年から新しい検定教科書が使用されます。同時にデジタル教科書を紙媒体と同じ正式な教科書として扱うことにしています。ただし主体は紙媒体で,デジタル教科書は紙媒体のPDF版のみとなるようです。
先般,すでに発行されているデジタル教科書に触れる機会がありましたが,動画や音声朗読の機能がついていたり,単語帳や問題集の答えを目隠ししたり,デジタル化ならではの学習スタイルが取り入れられていました。そのような機能はすべて有償で付加する方針のようです。また,当初は全校児童にタブレットを1人1台配布するよう目標を掲げていましたが,現状では1校あたり20台を目標にしており,普及にはまだまだ時間が掛かるようです。
デジタル教科書には賛否両論あるかと思います。紙の手触りに親しむこと,読者が自由に書き込んだり補足したり思いどおりに使えることなどは,紙媒体ならではです。一方,先にあげた動画や音声朗読など電子でしかできない機能は,紙媒体では表現できなかった可能性を広げて学習をサポートする機能であります。義務教育にデジタル教科書が普及してくれば,将来的には大学・短期大学・専門学校の教科書も電子化が進んでいくことが予想されます。安易に電子媒体の普及を促進することは,実際に学生を指導されている先生方のご意見をうかがっていても,良い影響だけとは思えません。紙媒体と電子媒体,双方の利点を活かした着地点を見極めることが必要になってくるかと思います。
紙であれ電子であれ,若い世代が文字・活字に触れる機会を増やすことによって,未来のノーベル賞受賞者を育てることに貢献できるような活動をしていければと思うところです。
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