初版はしがき
栄養教諭制度は2005(平成17)年4月1日スタートした。それまでは,主に学校給食の管理業務を中心とする学校栄養職員が,食に関する指導の一部を担ってきた。今回の創設で,栄養教諭は食に関する指導と学校給食の管理を一体的のものとしてその職務とし,教諭や養護教諭と並んで,児童・生徒に対する指導を直接的に担う教育職員として位置づけられたのである。
栄養教諭制度は,2004(平成16)年1月20日の中央教育審議会答申において,「近年,食生活の乱れが深刻になっており,望ましい食習慣の形成は,今や国民的課題になっている。子どもたちが将来にわたって健康に生活していけるようにするためには,子どもたちに対する食に関する指導を充実し,望ましい食習慣の形成を促すことが重要である。また,食に関する指導の充実は,「生きる力」の基礎となる健康と体力を育むほか,食文化の継承,社会性の涵養などの効果も期待できる。」と提言されたのを受けて,学校における食に関する指導体制を整備するために創設されたものである。
栄養教諭の免許状は,栄養士あるいは管理栄養士の基礎資格の上に,教育に関する専門性を併せ持つこととされている。養成においては,新設された科目「栄養に係わる教育」で,食文化や食の歴史など,児童・生徒を取り巻く課題を踏まえ,栄養教諭としての使命や職務内容の重要性を理解し,教育に関する専門性および栄養に関する専門性を横断的に身に付けることができるようにすることを目的としている。
新設科目であり,その趣旨や内容を養成課程の学生や関係者はもとより,現職の栄養教諭あるいは学校栄養職員にも理解され,食に関する指導の充実が図られるように周知することが緊急の課題と考えられる。本書は,それらの趣旨を踏まえ,栄養教諭養成課程の「栄養に係わる教育」に関する科目2単位の教科書として企画したものである。
本書をひとつのベースとして,栄養教諭がその役割を自覚し,その活動がより良いものとなることを願っている。
本書の発刊のきっかけを作っていただいた中村丁次先生,山本茂先生,編集意図を理解いただき限られた時間で執筆いただいた先生方,本書の発刊に終始ご尽力いただいた建帛社筑紫社長ならびに編集部の方々にお礼申し上げる。
平成17年7月
編著者 金田 雅代
四訂によせて
平成29年3月に小学校,中学校,4月に特別支援学校(小学部・中学部),平成30年3月に高等学校,平成31年2月に特別支援学校(高等部)の学習指導要領が改訂されました。今回の学習指導要領の改訂の基本的な考え方は三つあり,一つ目は社会に開かれた教育課程を重視すること,二つ目は確かな学力を育成すること,三つ目は体育健康に関する指導の充実により豊かな心や健やかな体を育成することです。
この学習指導要領の改訂で特筆したいことは,平成20年の改訂で初めて明記された「学校における食育の推進」は「体育科の時間はもとより~」であったものが,今回は「体育科,家庭科及び特別活動の時間はもとより,各教科,道徳科,外国語活動及び総合的な学習の時間などにおいてもそれぞれの特質に応じて適切に行うよう努めること」と具体的に教科等が示され,学校教育活動全体を通じて指導することがより明確になったことです。
このことは平成28年12月21日の中央教育審議会答申の中に,健康・安全・食に関する資質・能力として,「食を取り巻く社会環境が変化し,栄養摂取の偏りや朝食欠食といった食習慣の乱れ等に起因する肥満や生活習慣病,食物アレルギー等の健康課題が見られるほか,食品の安全性の確保や食料自給率向上,食品ロス削減等の食に関わる課題が顕在化している」ことが課題として示され,前回の答申より食に関する問題は深刻化しており,食育の推進は待ったなしの国の重要課題であることに他なりません。生涯にわたって健康で安全な生活や健全な食生活を送るために必要な資質・能力を育むためには,栄養教諭が果たす役割はますます重要になっています。
本書は,今回の学習指導要領の改訂,『食に関する指導の手引(第二次改訂版)』の改訂を踏まえて大幅に内容を見直し,併せてこの10年間に取り組まれてきた食育の実践例等の充実を図り,四訂版としました。
さらに,令和3年3月に策定された第4次食育推進基本計画をはじめとした最新の動向,統計データの更新などに対応した四訂第2版を,次いで更に統計データを新しいものにした四訂第3版を発行しました。
栄養教諭を目指す学生の教科書として,また,栄養教諭,学校栄養職員,教職員,地域で活躍されている食育関係者の方々にもご活用いただけることを願っております。
最後に,各執筆者の先生方,建帛社の会長はじめ編集部の皆様のご協力を得て発刊に至りましたことをここに記して御礼の言葉といたします。
令和8年1月
編著者 金田 雅代