建帛社だより「土筆」

平成31年1月1日

栄養学教育モデル・コア・カリキュラム

徳島大学教授 日本栄養改善学会広報担当理事 酒井 徹この著者の書いた書籍

 成十二年、国民の健康問題や少子高齢社会における様々な問題を改善できる高度な専門的知識および技能を有する管理栄養士の育成を目的とし、栄養士法の改正が行われた。改正には、管理栄養士の国家試験受験資格の見直しが含まれていた。その影響により、多くの栄養士養成校が管理栄養士養成校となり、平成七年には全国で約三十校程度であったのが、平成三十年には百五十校に届くほど急増した。さらに、毎年約一万人が管理栄養士国家試験に合格し、新たに管理栄養士名簿に登録されている。
 のように、多くの管理栄養士教育を行い、世の中に輩出しているにもかかわらず、国が先導している教育基準は管理栄養士国家試験ガイドラインのみであり、養成校において実際に行われている教育の内容および質に関して学校間格差が見受けられるのが現状である。
 師・歯科医師・看護師・薬剤師といった医療系職種においては、国が先導してモデル・コア・カリキュラムの検討を行い公表している。しかしながら、国による管理栄養士・栄養士のモデル・コア・カリキュラムの検討は行われていない。このような社会的背景と他医療職種の検討動向を踏まえ、厚生労働省は日本栄養改善学会に「管理栄養士専門分野別人材育成事業(教育養成領域での人材育成)」を委託した。
 成二十九年より武見ゆかり理事長(女子栄養大学)を中心として本事業を開始・遂行している。その内容をここで簡単に解説したい。医療系職種におけるモデル・コア・カリキュラムでは、国民にわかりやすいそれぞれの職種が“目指す姿”のキャッチフレーズが付与されている。今回の検討で、管理栄養士・栄養士の目指す姿のキャッチフレーズは「栄養・食を通して、人々の健康と幸福に貢献する」である。
 体的な栄養学教育モデル・コア・カリキュラム(案)の構成は、A.管理栄養士として求められる基本的な資質・能力をはじめとして、専門基礎科目・専門応用科目(B.社会・環境と健康、C.栄養学実践のための専門基礎、D.ライフステージと栄養、E.疾患と栄養、F.食べ物と栄養)、G.栄養学実践のための統合実習、H.栄養学研究よりなっている。
 れぞれの項目で、どのようなことを学修する必要があるのかは、日本栄養改善学会会員を中心とした精鋭部隊による検討が進行中である。項目B~Fに関しては、それぞれの養成校で行われている教育のコアとなる学修内容を三分の二程度に絞り込み、残りの三分の一をそれぞれの養成校で行う独自の特色ある教育内容にあてることを基本としている。
 のモデル・コア・カリキュラムは管理栄養士および栄養士別に組み立てられており、また卒後教育である大学院教育という観点からの検討も同時に行っており、平成三十一年三月に公表される予定である。日本栄養改善学会のホームページでも中間報告が公表されているので、関心がある方はご覧いただきたい(http://jsnd.jp/h29kourou.html)。

目 次

第109号平成31年1月1日

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