平成31年1月1日
介護福祉士養成課程における教育内容の見直し
厚生労働省社会・援護局福祉基盤課福祉人材確保対策室介護福祉専門官 伊藤 優子この著者の書いた書籍
昨年、介護福祉士養成教育課程のカリキュラムの見直しが行われ、今年の四月より順次、新カリキュラムが導入される予定である。
高齢化が進むわが国において、介護人材の確保は喫緊の課題であるが、介護人材の確保には、量の確保とあわせて質の確保が求められる。社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会では、介護現場の実態調査の結果を踏まえ“介護人材の全体像のあり方”や“介護福祉士が担うべき機能のあり方”について議論が行われ、平成二十九年十月に報告書「介護人材に求められる機能の明確化とキャリアパスの実現に向けて」がとりまとめられた。
報告書には、利用者の多様なニーズに対応し質の高いケアを提供するためには、①限られた人材をより有効に活用し介護職がチームでかかわっていく必要性があること、②多様な人材によるチームケアを推進するにあたっては、一定のキャリアを積んだ介護福祉士がチームリーダーの役割を担うべきであること、などが示されている。
また“求められる介護福祉士像”を見直し、介護福祉の専門職として、介護職グループの中で中核的な役割を果たし、認知症高齢者や高齢者単身世帯の増加などに伴う介護ニーズの複雑化・多様化・高度化に対応できる介護福祉士を養成する必要性があるとされた。
これを受けて“求められる介護福祉士像”に即した介護福祉士を養成するために、教育内容の見直しの検討チームを設置し、現行の介護福祉士養成課程の教育内容を整理したうえで、①チームマネジメント能力を養うための教育内容の拡充、②対象者の生活を地域で支えるための実践力の向上、③介護過程の実践力の向上、④認知症ケアの実践力の向上、⑤介護と医療の連携を踏まえた実践力の向上、の五つの観点から教育内容の見直しを行っている。
今回の改正では“人間関係とコミュニケーション”の教育に含むべき事項に“チームマネジメント”を追加し、三十時間以上から六十時間以上に時間数を拡充した。介護福祉士には、介護職グループの中での中核的な役割や、チームリーダーとしての役割が求められていることから、人間と社会に関する選択科目に置かれていた“組織体のあり方、対人関係のあり方、(リーダーとなった場合の)人材育成のあり方についての学習”を整理し“介護実践をマネジメントするために必要な組織の運営管理、それらに必要なリーダーシップ、フォロワーシップなど、チーム運営の基本を理解する内容”を留意点として示し、チームで働く能力の習得を目的とした。
新カリキュラムには、教育に含むべき事項の主旨を明確にするための留意点を示している。これは、介護福祉の専門職として「介護福祉士」に何が求められているのかを示すものでもある。
これからの介護福祉士養成教育に期待するとともに、今回の内容の見直しが、介護サービスの質および国民の福祉の向上につながることを真に願っている。
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