建帛社だより「土筆」

令和4年1月1日

食物摂取頻度調査票(FFQ)って何?

奈良女子大学教授 髙地リベカこの著者の書いた書籍

 物摂取頻度調査票(FFQ)を用いた食事調査は,一定期間内の食品ごとの摂取頻度とポーションサイズ(食品の1回当たりの摂取重量)を,調査票(食品リスト)を用いて調査し,当該期間の1日当たり摂取量を推定する方法である。卓上しょうゆの使用頻度といった食行動を組み合わせるものもある。食品リストの開発・妥当性検証と,利用目的について説明する。

 ず,食品リストの開発では,食生活を包括的に捉える目的でも摂取する可能性のある食品すべてを網羅するのは現実的ではない。

 般的な食品の選択条件として,食品が対象集団のかなりの人に頻繁に食べられていること,調査の目的とする栄養素を含んでいること,利用頻度や量が人によって異なっていることがあげられる。多くの場合,同様の対象者集団において事前に行った食事調査に基づいて行われる。

 えば,研究目的となる栄養素摂取量の給源となっている食品リストから栄養素摂取の寄与率上位80%の食品を抽出するとする。栄養素を網羅的に調べるFFQなら,複数の栄養素について寄与する食品を抽出してリストを整理できる。なお,摂取頻度の選択肢は,誰もが特定の回答に集中しないように設定し,摂取頻度の高い方をできるだけ詳しくきく方が,個人差を検出するには適切である。

 に,開発されたFFQは,使用目的に応じてその推定精度の確からしさ(妥当性や再現性)を定量的に検証する必要がある。調査票が対象とする調査期間に準じた習慣的な食事の実測値(例:3日間×四季の12日間食事記録の平均値)を比較参照基準とし,FFQによる推定摂取量と比較することを妥当性といい,適当な間隔で(例:1年)同じ調査票に回答してもらい,同様の摂取量が得られるか比較することを再現性と呼ぶ。FFQの推定精度は,栄養素項目や食品・食品群によって異なること,対象特性(食習慣)の大きく異なる集団に適用した場合には同様の推定精度を示すとは限らないことには留意が必要である。

 して,FFQは多くの栄養疫学研究の主要な曝露評価法として開発され活用されている。疫学研究でFFQが利用される理由は,①長期の平均的な食事状況を評価できる,②自記式でマークシート等による機械的なデータ処理が可能になるため,他の方法(秤量食事記録等)での「習慣的な摂取量評価」より大幅にコストを削減できる,③被調査者の負担が軽減できることによって大規模調査が可能であることにある。

 方,短所は,①推定値が調査票の食品リストに依拠する,②対象者の記憶に依存した回答に基づく,③栄養素摂取量推定には食品成分表の精度にも依拠することがあげられる。加えて,前述のように精度を定量的に検討する必要がある。

 な目的は,食事摂取量の絶対値よりむしろ相対評価(摂取量の個人差によるランク付)を行うことにあることは,開発の特性と妥当性の確認方法を踏まえて理解が必要なところである。

 者は,建帛社の栄養計算ソフト「栄養プラス」のアドインソフトとして3月発売予定の「FFQ NEXT」の監修に一役買っている。これは,国立がん研究センターによる次世代多目的コホート研究での利用目的で開発・妥当性検証されたFFQに基づいている。

目 次

第115号令和4年1月1日

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